北アイルランドのドラムンベース・プロデューサーCalibreが2017年にリリースした『The Deep』は、ジャンルの枠を超えてリスナーの心に染み渡る、静かで深遠な音の旅だ。情緒豊かなメロディと繊細なビート、そしてアンビエント的な空気感をまとったこのアルバムは、クラブ・ユースのみならず、じっくりと音楽に浸りたい人々にも深く響く一枚である。
⬇️アマゾンミュージックで『The Deep』をチェック⬇️
Amazon MusicでCalibreのThe Deepを再生する
Amazon.co.jp: The Deep : Calibre: デジタルミュージック
ジャンルと音楽性
Calibreのルーツであるドラムンベースを軸にしながらも、『The Deep』ではソウル、ジャズ、ダウンテンポ、アンビエントといった要素が色濃く反映されている。攻撃性は抑えめで、浮遊感のあるベースラインと繊細なリズム構築が特徴的だ。ボーカルサンプルやピアノ、ストリングスなどが有機的に絡み合い、まるで音楽が呼吸をしているかのような感覚を覚える。
Calibreは基本的にリリースに際してプロモーションを控える寡黙なアーティストとして知られているが、その音楽は雄弁だ。本作もまた、リスナーに内省的な時間を与えてくれる。
リンク
おすすめのトラック
- 「No One Gets You」
シンプルなピアノリフと憂いを帯びたボーカルサンプルが繰り返される、まさにアルバムのエッセンスを凝縮したような一曲。夜の街を一人歩くような孤独と親密さを同時に感じさせる。 - 「Up in Smoke」
静かな導入からじわじわと音が重なり、深く潜っていくような構成が印象的。柔らかく浮遊するようなベースが、聴き手を包み込む。 - 「Mr. Natural」
本作の中では比較的テンポが速めで、ファンキーなベースラインが心地よいグルーヴを生み出している。ドラムンベース本来のエネルギーを感じさせつつ、品のある仕上がり。 - 「Round Box」
ミニマルな構成ながら、エモーショナルなメロディラインが印象に残る。内省的な雰囲気の中に、Calibreらしい叙情性が際立つ。 - 「Gentle Push」
柔らかく淡いピアノとささやくようなリズム。まるで夢と現実の狭間をさまようような心地よさがある。アルバムを締めくくるにふさわしい、静かで穏やかな余韻を残す一曲。
アルバム総評
『The Deep』は、その名の通り深く、静かに、そして確実にリスナーの内面に語りかけてくる作品だ。Calibreのプロダクションは控えめながらも非常に緻密で、感情を揺さぶる力を秘めている。派手な展開はないが、その分リピート再生するたびに新たな発見がある。夜に一人で聴くのにぴったりの、上質な音のドキュメント。ドラムンベースという枠を超えて、多くの音楽ファンに体験してほしい珠玉の一枚だ。