Cabaret Voltaireの『#7885 (Electropunk to Technopop 1978-1985)』は、イギリスのエクスペリメンタル・エレクトロニックバンドであるCabaret Voltaireの1978年から1985年までの代表的な楽曲を収録したコンピレーション・アルバムです。このアルバムは、バンドの音楽的進化を象徴するものであり、彼らの初期の「エレクトロパンク」から後期の「テクノポップ」へと移り変わる過程を捉えた重要な作品です。
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背景と制作
Cabaret Voltaireは、1973年にイギリスのシェフィールドで結成されました。彼らの音楽は、パンクロックの精神を持ちながらも、伝統的なバンド編成ではなく、シンセサイザーやドラムマシン、サンプラーなどを駆使して独自のサウンドを作り出していました。彼らの名前は、第一次世界大戦中のダダイスム運動の中心的なカフェ「キャバレー・ヴォルテール」に由来しており、その名の通り、既存の音楽や文化の枠組みを破壊し、新しい形の芸術を追求する姿勢を反映しています。
1970年代後半から1980年代初頭にかけてのCabaret Voltaireは、インダストリアルミュージックの草分け的存在であり、エレクトロパンクやアヴァンギャルドなエレクトロニカのスタイルを確立しました。彼らの音楽は、ノイジーで実験的なサウンドスケープを特徴とし、ポストパンクやニューウェイブと並行して進化していきました。しかし、1980年代に入ると、Cabaret Voltaireはより洗練されたリズムを取り入れ、ダンスフロアを意識したテクノポップの方向へとシフトしていきました。『#7885』は、その音楽的進化の軌跡を網羅しており、彼らのキャリアの最も重要な時期を包括的に振り返ることができるコンピレーションです。
サウンドとテーマ
『#7885 (Electropunk to Technopop 1978-1985)』は、バンドが持つサウンドの変遷を象徴する作品です。アルバムのタイトルにもあるように、初期の「エレクトロパンク」時代の荒々しく、実験的なトラックから、1980年代中盤の「テクノポップ」に代表される、より洗練されたエレクトロニック・ダンスミュージックへと移行する様子がはっきりとわかります。
この時期のCabaret Voltaireの音楽は、初期にはインダストリアル的な無機質で冷たい雰囲気や、サンプリングされた音声やノイズを多用し、退廃的で反体制的なメッセージを込めた作品が多く見られました。例えば、彼らの初期の代表曲「Nag Nag Nag」は、単純なリズムパターンに重ねられた不協和音や、反復される攻撃的なボーカルが特徴で、パンクのDIY精神と電子音楽を融合させたエレクトロパンクの典型です。
一方で、1980年代に入ると彼らの音楽はよりリズミカルで、テクノポップやエレクトロニック・ボディ・ミュージック(EBM)の影響が強くなっていきます。この変化は、「Yashar」や「Sensoria」といった楽曲に顕著に現れており、これらのトラックは、ダンスフロアでも受け入れられるようなビートと、複雑なエレクトロニックサウンドを融合させたもので、彼らのテクノポップ時代を象徴するものとなっています。特に「Yashar」は、アンダーグラウンドクラブシーンで人気を博し、彼らの音楽がアートプロジェクト的な実験から、より大衆的なダンスミュージックへと進化していく過程を示しています。
商業的成功と評価
Cabaret Voltaireは、メインストリームの商業的成功には至りませんでしたが、アンダーグラウンドの音楽シーンや、特にエレクトロニカやインダストリアル、テクノの分野で非常に大きな影響を与えました。彼らの革新的なサウンドは、後のエレクトロニックミュージック、特にインダストリアルやテクノのパイオニアたちに多大な影響を及ぼし、Nitzer Ebb、Front 242、Nine Inch Nailsなどのアーティストにインスピレーションを与えました。
『#7885』は、彼らのキャリアを通して多様な音楽スタイルを包括しており、特に音楽的な進化を体験できるため、Cabaret Voltaire初心者にも最適な入門編と言えるでしょう。彼らの初期の粗削りで攻撃的なエレクトロパンクから、後期のダンスミュージック志向のテクノポップへの変遷が、このアルバムを通して一度に味わえることが大きな魅力です。
ジャンル
Cabaret Voltaireの音楽は、ジャンルの境界を越えるものが多く、主に以下のジャンルに分類されます。
- エレクトロパンク: 初期の音楽スタイルで、パンクの反抗的なエネルギーと電子音楽を融合させたジャンルです。攻撃的でノイジーなサウンドが特徴です。
- インダストリアル: 機械的で無機質なサウンドスケープ、サンプラーを駆使したノイズや環境音を多用するスタイル。彼らの初期の作品に多く見られます。
- テクノポップ: 1980年代に入ってからの進化したスタイル。エレクトロニックダンスミュージックの影響を強く受けたリズミカルでキャッチーなサウンドが特徴です。
おすすめの曲
- 「Nag Nag Nag」
Cabaret Voltaireの初期の代表曲で、エレクトロパンクの典型例です。単純で反復的なリズムに、不協和音やノイズが重なり、攻撃的なボーカルが印象的です。パンクの精神とエレクトロニカの融合が鮮烈です。 - 「Yashar」
テクノポップ時代の代表曲で、彼らの進化を示す重要なトラックです。重厚なビートと緻密なエレクトロニックサウンドが融合し、クラブシーンでの人気を得ました。 - 「Sensoria」
ダンサブルなテクノポップスタイルの楽曲で、エレクトロニック・ボディ・ミュージックの要素が強く感じられます。彼らの後期スタイルを象徴するキャッチーなサウンドです。
『#7885 (Electropunk to Technopop 1978-1985)』は、Cabaret Voltaireの音楽的旅路を辿ることができる必聴のコンピレーションであり、エレクトロニックミュージックやインダストリアル、パンクの歴史に興味があるリスナーにとっても価値のある作品です。