DJマーキー & XRSの『In Rotation』は、ブラジル出身のドラムンベース・デュオが2000年代前半に世界へ提示した躍動と多幸感に満ちた一枚だ。UK発祥のドラムンベースを自国の空気感とメロディ感覚で再解釈し、軽やかでいてスピリットに満ちた「南半球のD’n’B」の代名詞といえる音像がここにはある。煌びやかなベースライン、心を持ち上げるコード展開、そしてハウスやジャズ、ポップス的な流麗さが絶妙に融合した作品だ。
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ジャンルと音楽性
本作は、ドラムンベースという高速ビートを土台としながら、過剰な攻撃性ではなく、躍動感と温度感、そして透明感を重視した音楽性が際立つ。UKのD’n’Bにありがちなダークさや硬質さとは異なり、DJマーキー & XRSはメロディとフィーリングを軸に、クラブでの高揚と青空の下で聴きたくなる解放感を同居させている。アコースティック楽器やジャズ的ハーモニーを織り交ぜ、深いグルーヴを生みつつ、空間を広げるシンセと柔らかいベースラインが、ダンスミュージックでありながら“心地よさ”を際立たせている点が特徴的だ。
おすすめのトラック
- 「LK (Carolina Carol Bela)」
アルバムを代表する、もはや国境を越えたアンセム。サンバ・バイオリンのメロディを引用し、ブラジルの躍動をそのままUKクラブミュージックに注ぎ込んだ決定的な名曲。高揚と郷愁が同時に押し寄せる。 - 「Rotation」
タイトなビートの上で浮遊するシンセと温かなベースが交錯する、タイトル曲にふさわしいグルーヴ・トラック。まさに心をゆっくりと回転させるような没入感がある。 - 「Moments of Lust」
滑らかなコード進行と柔らかな音の表面処理が印象的。深夜の都市の空気を感じさせるような、クールでロマンチックな雰囲気が漂う。 - 「Rotation」
ブラジリアン・ドラムンベースの魅力を凝縮した軽やかで温度感のあるトラック。ジャングルの細やかなビートに、ラテン由来の柔らかなメロディとジャズ的なコード感が溶け合い、都会の夜景の中で心地よくスウィングするような浮遊感を生む。
アルバム総評
『In Rotation』は、クラブミュージックという枠を越えて“聴きたい情景が自然と心に浮かぶ”稀有なドラムンベース作品である。高速ビートの中に、陽光、鼓動、記憶、そして喜びが宿っている。ハードではなく、しかし確かな身体性と情緒を持っている。DJマーキー & XRSが世界に示した「ドラムンベースは美しく、温かく、魂に触れる音になりうる」という可能性は、今聴いてもなお鮮烈に響く。



