The Long Tall Texans/Saturnalia!
1984年にブライトンで結成されたイングランドのサイコビリーバンド、The Long Tall Texansの3rdスタジオアルバム『Saturnalia!』は、1989年にレイザー・レコードよりリリースされました。ベース兼ボーカルのマーク・カルー、ギタリストのマーク「ボーグルス」デンマン、ドラマーのアンソニー・テオドトウからなるトリオが、クラブ・フットの伝説的コンピレーションへの参加でシーンに名を刻んだ後、全盛期を迎えた時期にリリースしたアルバムです。黒盤と豪華なピクチャー・ディスクの両形態で発売され、後にビアー・ファミリーおよびレット・ゼム・イート・ヴァイナルからボーナストラックを追加した拡張版がリリースされています。
ジャンルと音楽性
全10曲の本作は、堂々とした自信と折衷性を持ち、ロジャー・テバットが80年代後期のプロダクションのタッチを加えています。サイコビリーの主要な音楽的要素がすべて揃いながらも、ジャンルのより陳腐なショック・ホラー要素を巧みに回避し、より知的なアプローチを選んでいます。そのサウンドは爽快なほどポップで、パンカビリーの派閥から明確に際立っており、ポップでありながらも退屈でも浅くもないという困難なバランスを見事に成し遂げています。

The Long Tall Texans/Saturnalia!
おすすめのトラック
- Get Back Wetback (Rio Grande Mix)
アルバムの幕開けを飾るシングル曲で、ラジオ1でエアプレイを獲得した本作最大の知名度を誇るトラックです。
「ウェットバック(メキシコからの不法移民)」という物議を醸すタイトルながら、バンドのサイコビリーのボーダー(境界)を越えようとする姿勢を象徴する楽曲として知られています。リオ・グランデ・ミックスという副題が示す南部の土埃と疾走感が全面に漲る、アルバムの顔です。 - Crossing Swords
アルバム2曲目に収録された、バンドの折衷的なスタイルが最もよく表れた一曲です。
「剣を交える」というタイトルが示す対決と緊張感が、The Long Tall Texansのサイコビリー×ロカビリーのサウンドに乗せて展開します。ギターとベースの絡み合いが際立つこのトラックは、バンドの演奏力の高さを如実に示しています。 - Cairo
エキゾチックな雰囲気漂う、アルバム中盤のハイライトです。
エジプトの首都「カイロ」をテーマにしたこの楽曲は、サイコビリーの枠を超えた地中海・中東的な色彩を帯びており、The Long Tall Texansが単なるサイコビリーバンドの枠を超えた音楽的な幅を持つことを証明しています。 - Get Your Teeth Out of My Jugular
タイトルの凄まじさだけで本作の個性を一言で語りきる、アルバム後半の最大のハイライトです。
「俺の頸動脈から歯を抜け」というグロテスクかつユーモラスなタイトルが示す通り、The Long Tall Texansがホラー要素を陳腐に堕することなく、鋭いユーモアとして昇華する才能を最もよく体現した一曲です。スラップベースとギターが猛烈に絡み合う疾走感は、このアルバムのサイコビリー的な爆発力の集大成といえます。
アルバム総評
ビアー・ファミリー・レコードが「間違いなく最高のサイコビリー盤のひとつ」と評した本作は、80年代末のサイコビリーシーンが最盛期を迎えた時期に生まれた傑作です。爽快なポップさとサイコビリーの爆発力の絶妙なバランスは、結成から約20年後に聴いても色褪せることなく輝いています。ブライトンというアメリカ南部とはかけ離れた土地から、テキサスの荒野を想起させるワイルドなサウンドを生み出したThe Long Tall Texansの底力が、この一枚に凝縮されています。
🎵Get Your Teeth Out of My Jugular


