Arctic Monkeys/Humbug
イングランド、シェフィールド出身のロックバンド、アークティック・モンキーズの3rdスタジオアルバム『Humbug』は、2009年8月19日にドミノ・レコーディング・カンパニーよりリリースされました。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オームとジェームズ・フォードが共同プロデュースを担当し、カリフォルニア州バーバンクのピンク・ダック・スタジオ、ジョシュア・ツリーのランチョ・デ・ラ・ルナ、ニューヨーク市のミッション・サウンドで録音されました。デビュー作『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』の超高速インディロックから一転、砂漠のサイケデリアへと大胆に舵を切った本作は、当初賛否を巻き起こしながらも、時を経るごとにその評価を高めてきた問題作にして傑作です。
ジャンルと音楽性
サイケデリックロック、ストーナーロック、デザートロック、ゴシックロックを横断するサウンドが本作の持ち味です。ジョシュ・オームとの共同作業は単なる著名プロデューサーの起用以上の意味を持ち、インディシーンの寵児であり続けることへの拒絶を宣言するものでした。アークティック・モンキーズとジョシュ・オームの異なる音楽的バックグラウンドは互いに補完し合い、「Crying Lightning」や「Dangerous Animals」ではベースリフが胃痙攣のように唸りを上げ、「Dance Little Liar」ではアレックス・ターナーが怠惰なギターのトワングの上でものうげにドローンします。

Arctic Monkeys/Humbug
おすすめのトラック
- Crying Lightning
アルバムの第1弾シングルにして、本作を世に知らしめた代表曲です。
ベースリフが胃痙攣のように腹の底から唸りを上げるこのトラックは、砂漠のサイケデリアとアークティック・モンキーズのソングライティングの才能が最も理想的な形で融合した一曲です。アレックス・ターナーの詩的な歌詞と、ジョシュ・オームのプロデュースが生む重厚な空気感が、聴くたびに引力を増していきます。 - Cornerstone
ジェームズ・フォードがプロデュースを手がけた3曲のうちのひとつで、アルバムの中でも最もポップでアクセスしやすい一曲です。ターナーの洗練されたクルーンとメランコリックなメロディが絡み合うこのトラックは、アルバム2枚目のシングルとしてもリリースされ、重厚なアルバムの中で光る清涼感と叙情性を放っています。 - Dance Little Liar
アレックス・ターナーが怠惰なギターのトワングの上でものうげにドローンする、4分44秒の暗く妖艶なサイケデリック・ナンバーです。本作の中でも最もジョシュ・オームの影響が色濃く滲む一曲で、アークティック・モンキーズがいかにデザートロックの美学を自分たちのものとして消化したかを如実に示しています。 - Pretty Visitors
オルガンのイントロと急速なドラム、そして謎めいてスピーディな歌詞が特徴的なトラックです。アルバム9曲目に収録されたこの曲は、ジョシュア・ツリーのスタジオで録音されたヘヴィなサウンドの中に、バンドのユーモアと実験精神が凝縮された一曲です。
アルバム総評
後から振り返れば、『Humbug』はリリース当初にふさわしい称賛をまったく得られなかったアルバムです。これは、リリース前のアークティック・モンキーズの急速な軌跡に少なからず起因しています。しかしながら、聴けば聴くほど深みが増すこのアルバムは、バンドが後に『AM』や『Tranquility Base Hotel + Casino』で到達する成熟への決定的な布石となっています。インディロックの名声を自ら捨て、砂漠の闇へと飛び込んだ勇気こそが、アークティック・モンキーズを一過性のブームで終わらせなかった理由です。
🎵Pretty Visitors



