Big D and the Kids Table/How It Goes
ボストンを拠点に活動するスカパンクバンド、ビッグ・ディー・アンド・ザ・キッズ・テーブルの3rdスタジオアルバム『How It Goes』は、2004年にスプリングマン・レコードとムーン・スカよりリリースされました。マサチューセッツ州ストートンのアウトポストで録音され、ジム・シーゲルがプロデュースを担当した本作は、全20曲・76分16秒という圧倒的なボリュームを誇ります。フロントマンのデイヴィッド・マクウェインは「音楽をやりたいバンドがいる一方で、音楽家がいる。俺たちはモダン・アメリカン・ジプシーだ」と語っており、その言葉通り、このアルバムには妥協のないDIY精神と音楽への純粋な愛が全編に漲っています。
ジャンルと音楽性
スカパンク、スケートパンク、ルーツレゲエを縦横無尽に行き来するサウンドが本作の持ち味です。ホーンセクションは柔らかく宥めることも力強く主張することもでき、オールドタイムな広告・ボイスメール・ヴァイナル再生指示といった音声クリップを挿入するユニークな演出も随所に光っています。パンク、スカ、ポップパンクを一つのエンターテインメント・パッケージとして融合させる手腕は、スプリームス、レス・ザン・ジェイク、ストリートライト・マニフェストと並び称されるボストン・スカシーンの底力を存分に示しています。

Big D and the Kids Table/How It Goes
おすすめのトラック
- The Sounds of Allston Village
アルバムの幕開けを飾る、ボストン下町への愛に満ちたオープナーです。
オールストン・ヴィレッジというバンドの地元エリアを題材にしたこのトラックは、ホーンラインが主導する高揚感とデイヴ・マクウェインのハスキーなボーカルが絡み合い、聴き手を即座にビッグ・ディーの世界へと引き込みます。地元への愛と誇りが音楽に宿る、このバンドの精神的な原点ともいえる一曲です。 - New Nail Bed
アップストロークに満ちたストレートなスカパンクの喜びが全開になる一曲です。ホーンラインが躍動し、リズムセクションが弾けるこのトラックは、スカパンクのジャンルが持つ最もキャッチーで爽快な側面をストレートに体現しています。アルバムの中でも最もダンスフロア映えする、疾走感あふれる一曲です。 - My Girlfriend’s on Drugs
アルバムの中でも特にユーモアと切なさが絶妙に同居する一曲です。
タイトルのインパクトだけで笑いを誘いながら、実際に聴くとデイヴ・マクウェインの感情的なボーカルが予想外の深みを持って胸に刺さります。スカのアップストロークとホーンセクションが絡み合う躍動感の中に、どこか哀愁が滲み出るこのトラックは、ビッグ・ディー・アンド・ザ・キッズ・テーブルが単なる「楽しいだけのスカバンド」ではないことを証明する一曲です。 - Girls Against Drunk Bitches
「良い時代のパンクロックにホーンを加えた」曲として評されるアルバム屈指のアンセムです。パーティーへの皮肉な視線とユーモアを込めた歌詞に、バンドのライブでの爆発力が凝縮されており、タイトルのセンスだけでこのバンドが何をしたいかが一瞬で伝わります。ライブでは観客のシンガロングが巻き起こる、本作の隠れた核心部です。
アルバム総評
キャッチ22、マスタード・プラグ、プラネット・スマッシャーズとの「スカ・イズ・デッド・アンド・ユーア・ネクスト・ツアー」や、ヴァンズ・ワープド・ツアーへの参加でスカシーンに確固たる地位を築いたビッグ・ディー・アンド・ザ・キッズ・テーブルが、全精力を注ぎ込んで完成させた本作は、アブソリュートパンクで92点、バンドキャンプで「次世代のための深く感染力の高いフッキーなスカパンク」と評された傑作です。76分・全20曲という圧倒的なボリュームは一見無謀に思えますが、20曲を通じてほぼ一瞬も飽きさせないバンドの多様性と曲構成の妙が、このアルバムを単なる大作ではなく本物の傑作たらしめています。
🎵My Girlfriend’s on Drugs


