フー・ファイターズの11枚目のスタジオ・アルバム『But Here We Are』は、バンドにとって極めて個人的かつ感情的な作品となった。2022年、長年のドラマーでありバンドの要でもあったテイラー・ホーキンスを突然失った彼らは、その喪失と向き合いながら音楽を作り続けた。本作は、そんな彼らの悲しみ、怒り、そして前へ進もうとする決意が詰まった一枚だ。
ジャンルとしては、オルタナティブ・ロックやポスト・グランジの要素を軸にしつつ、これまでのFoo Fightersらしいダイナミックなロックサウンドが展開されている。ヘヴィで荒々しいギターリフと、エモーショナルなメロディが共存する楽曲の数々は、リスナーの心を強く揺さぶる。
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喪失を乗り越え、音楽へ昇華
このアルバムは、バンドにとって単なる新作ではなく、喪失の痛みを乗り越えるための音楽的なカタルシスとも言える。アルバムのタイトル『But Here We Are』は、「それでもここにいる」といった意味を持ち、困難を乗り越えながらも前に進むバンドの意志を象徴している。
プロデュースを手掛けたのは、Greg Kurstin(グレッグ・カースティン)。彼は前作『Medicine at Midnight』にも関わったが、今作ではよりシンプルでストレートなロックサウンドに仕上げている。装飾を削ぎ落としたアレンジは、バンドの生々しい感情をそのまま伝える役割を果たしている。
おすすめの楽曲
- 「Rescued」
アルバムの幕開けを飾る楽曲で、激しいギターとデイヴ・グロールの魂の叫びが印象的。まるで痛みを振り払うかのようなパワフルなサウンドが胸を打つ。 - 「Under You」
ホーキンスへの想いを綴ったかのような歌詞と、アップテンポなロックサウンドが融合したナンバー。感傷的になりすぎず、前を向こうとする力強さが感じられる。 - 「The Glass」
静と動が交差する楽曲。切ないメロディとエモーショナルな歌詞が印象的で、アルバム全体のハイライトの一つ。 - 「Rest」
アルバムのラストを飾る楽曲で、ピアノとシンプルなアレンジが際立つ。歌詞には「おやすみ(Rest)」という言葉が繰り返され、まるでホーキンスへの別れを告げるような終焉を迎える。
痛みの中に希望を見出す、Foo Fightersの新たな決意
『But Here We Are』は、Foo Fightersにとって最もパーソナルな作品の一つだ。喪失の痛みを乗り越え、音楽を通じて再生しようとするバンドの姿勢が、アルバム全体に滲み出ている。激しいロックナンバーから静謐なバラードまで、様々な感情の波が押し寄せるが、それでも最後には希望が見えてくるような作品だ。
長年のファンにとっても、初めてFoo Fightersを聴く人にとっても、このアルバムは深い感動を与えるに違いない。ロックバンドとしての新たな章を開いた彼らの姿を、ぜひこのアルバムを通じて感じてほしい。