The Killersが2012年に発表した4枚目のスタジオ・アルバム『Battle Born』は、アメリカ西部の風景を映すかのような広がりと、個人の孤独や希望を重ね合わせた叙情的ロックの傑作である。ラスベガス出身の彼らが“バトル・ボーン”=「戦いに生まれついた者たち」と銘打ったこの作品は、決して派手な勝利の歌ではなく、日々を戦い抜く人々への賛歌として静かに、しかし情熱的に響く。
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Amazon.co.jp: Battle Born : ザ・キラーズ: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
『Battle Born』は、インディー・ロックやポストパンク・リバイバルの要素をベースにしながらも、前作『Day & Age』よりさらに壮大なアメリカーナ、ハートランド・ロックの影響が色濃く出ている。Bruce SpringsteenやU2を思わせるスケールの大きいギターサウンド、煌びやかで広がりのあるシンセ、そしてBrandon Flowersのドラマチックなボーカルが重なり、情景を喚起させるストーリーテリングがアルバム全体に息づいている。
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おすすめのトラック
- 「Runaways」
アルバムのリード・シングル。疾走感のあるギターと壮大なメロディが印象的で、若き恋人たちの逃避行を描いた歌詞はまさにThe Killers節。感情のうねりが胸を打つ名曲。 - 「Miss Atomic Bomb」
「Mr. Brightside」の続編とも言える切ないラブソング。ノスタルジックなイントロからサビに向かってエモーションが高まる展開は圧巻。タイトルは1950年代のネバダ核実験からの引用で、バンドの地元愛と皮肉が込められている。 - 「The Way It Was」
過去の恋を悔い、もう一度やり直したいという願いがにじむ曲。80sライクなシンセとドラマティックな展開が、映画のワンシーンのように聴き手を物語の中に引き込む。 - 「Battle Born」
タイトル曲であり、アルバムの精神を象徴するような一曲。穏やかなピアノから始まり、力強いサビへと高まりながら、どこまでも続く道を走り抜けるような壮大なイメージを描く。 - 「A Matter of Time」
ひときわエネルギッシュで、Brandon Flowersの情熱的なボーカルが未来と運命を賭けた葛藤を歌い上げる。80年代のアリーナロックを彷彿とさせるサウンドスケープは、切迫感と希望が交錯する感情の旅路へとリスナーを誘う。キラーズ流“宿命ロック”の真骨頂。
アルバム総評
『Battle Born』は、The Killersがポストパンク・リバイバルの旗手としての役割を超え、アメリカン・ロックの語り部としての地位を築いた作品といえる。派手さではなく、人生の小さな勝利や敗北、希望や喪失といった感情に寄り添うサウンドは、年を重ねたリスナーほど深く共鳴するはずだ。どこまでも広がる空と道を思わせる壮大な音作りに、The Killersの成熟がにじむ名盤である。