1997年にリリースされたCornershopの『When I Was Born for the 7th Time』は、ロンドン発の多国籍音楽集団が放つ、ジャンルの垣根を越えた実験精神とポップセンスが共存する名盤です。バングラ文化とブリットポップの融合、ヒップホップやレゲエの要素をも溶け込ませたこの作品は、90年代後半のUKミュージックシーンに新風を巻き起こしました。とくに代表曲「Brimful of Asha」は、世界中で大ヒットを記録し、グローバルな視野とローカルなルーツが共鳴する好例として知られています。
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ジャンルと音楽性
このアルバムの魅力は、ロック、ファンク、ヒップホップ、インド音楽、レゲエなどの多様なジャンルが自在に交錯するクロスカルチャー的な音楽性にあります。中心人物Tjinder Singhのパンジャブ系ルーツを生かしたサウンドメイクは、UKインディーロックの枠を大きく広げました。サンプラーやターンテーブルを活用しつつ、生楽器とのバランスも巧み。アンダーグラウンドのにおいを残しつつ、リスナーに寄り添うポップな表現も失わない稀有なバンドといえるでしょう。
おすすめのトラック
- 「Brimful of Asha」
パンジャビ音楽文化と映画音楽への愛を、軽快なギターリフとグルーヴィーなベースに乗せて展開。Norman Cook(Fatboy Slim)によるリミックス版も有名ですが、原曲の穏やかな魅力はまた格別です。 - 「Sleep on the Left Side」
アルバムの冒頭を飾る、メロウでファンキーなナンバー。ビートルズ的なコード感と、インド音楽の旋律美が滑らかに融合したトラックで、アルバム全体の方向性を象徴しています。 - 「We’re in Yr Corner」
英語とパンジャビ語が交錯するリリックに加え、ドローン的なシタールとレイドバックしたリズムが中毒性のある楽曲。反復の美学がじわじわと効いてくる、スモーキーな佳作です。 - 「Funky Days Are Back Again」
タイトル通り、ファンキーかつ陽気な雰囲気に満ちたナンバー。70年代ソウルの影響が色濃く、当時のUKシーンでは珍しいテイストを取り入れていた先進的な姿勢が光ります。 - 「Good to Be on the Road Back Home Again」
アコースティックギターとしっとりとした歌声が胸に沁みる、カントリーテイストのバラード。これまでの混沌とした音世界とのギャップが感情的な奥行きを生んでいます。
アルバム総評
『When I Was Born for the 7th Time』は、90年代末の音楽的多様性を象徴する一枚であり、現在の多文化主義的ポップミュージックの先駆けともいえる存在です。Cornershopはポストコロニアル的視点をもったバンドとして、音楽だけでなく社会的にも重要なポジションを築きました。このアルバムでは、あらゆるジャンルをフレンドリーに受け入れ、しかも消化不良にならずにポップにまとめあげるセンスが際立っています。文化的境界線を軽やかに飛び越える姿勢は、2020年代の耳にもフレッシュに響き続けることでしょう。