1977年、パンクの嵐が吹き荒れるニューヨークで、Televisionが放ったデビュー作『Marquee Moon』は、同時代の粗削りなアティチュードとは一線を画し、知的で美しく、複雑なギターアンサンブルによってロックの未来を指し示した金字塔的アルバムだ。リーダーのトム・ヴァーレインによる詩的でミステリアスなリリックと、緻密に絡み合うギターが生み出す緊張感は、今なお多くのバンドに影響を与え続けている。
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ジャンルと音楽性
一聴するとポストパンクに分類されがちだが、その音楽性はきわめて独創的だ。ツインギターによるリフと即興的なソロの応酬、ミニマルなリズムセクション、浮遊感のあるヴォーカル。ロックの即興性とジャズ的構築美が同居するそのサウンドは、当時のパンクムーブメントとは異なるアプローチで前衛性を切り拓いていた。アートロック、ニューウェーブ、オルタナティブ…あらゆる文脈から再評価される名盤である。
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おすすめのトラック
- 「Marquee Moon」
アルバムのタイトルトラックにして、ロック史に残る名曲。10分を超える長尺の中で、ギターのインタープレイがこれでもかと展開され、聴く者を異次元へと誘う。リフレインのように繰り返されるギターラインは、次第に熱を帯び、終盤にはリスナーの意識をトランス状態へと導く。 - 「See No Evil」
アルバム冒頭を飾る力強いナンバー。躍動感あるギターとタイトなリズムセクションが炸裂し、Televisionのサウンドがただのパンクではないことを瞬時に示す。ヴァーレインのヴォーカルが不穏さとクールさを兼ね備え、リスナーの心を掴む。 - 「Venus」
「I fell right into the arms of Venus de Milo(僕はミロのヴィーナスの腕の中に落ちた)」という印象的なラインから始まるこの曲は、甘美さと危うさが交錯する名品。歌詞の文学的なセンスとギターの美しさが溶け合い、幻想的な余韻を残す。 - 「Friction」
鋭利なギターと張り詰めた空気感が印象的なトラック。緊張と弛緩を行き来する構成で、まさにTelevisionの真骨頂とも言える一曲だ。冷たさの中に熱があるような、不思議な中毒性を持つ。
アルバム総評
『Marquee Moon』は、時代の潮流に乗ることなく、自らの美学を貫いた稀有なデビューアルバムであり、今聴いてもその鮮度と革新性はまったく失われていない。ギターの可能性を追求した演奏、知的で詩的なリリック、そしてアレンジの緻密さ。いずれを取っても並外れた完成度を誇るこの作品は、ポストパンク以前の静かな革命として、後続の数えきれないミュージシャンたちに道を開いた。
現代の耳で聴いてもなお新しく感じるこの作品は、ロックの本質的な「自由」と「探求」を体現している。『Marquee Moon』は、聴くたびに新たな発見がある、永遠のロック探求者のためのマスターピースだ。