1960年代初頭のアメリカン・ロックンロールを語る上で欠かせない、爽快なインスト・バンドThe Routers。彼らのデビューアルバム『Let’s Go! With the Routers』(1963年)は、その名の通り、勢いと活気に満ちたダンスフロア仕様の1枚です。フットボール場やダイナーで鳴り響きそうな「Go! Go!」という掛け声と、明快でエネルギッシュな演奏は、アーリー60sのティーン・カルチャーを象徴しています。
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ジャンルと音楽性
本作の中心にあるのは、サーフ・ロックやインストゥルメンタル・ロック。The VenturesやThe Chantaysなどと同じ流れにあるものの、The Routersはよりポップでキャッチーな路線に振り切っています。曲構成はシンプルながら、その分、リズムの躍動感やホーンのアクセントが耳を惹きます。サーフボードよりもチアリーダーが似合うような、よりスクールスピリット感の強い作品です。
おすすめのトラック
- 「Let’s Go (Pony)」
このアルバムの看板曲。クラップと「Let’s go!」の掛け声が繰り返されるだけで盛り上がれる、不滅のパーティーチューンです。実際に全米チャートでもヒットし、スタジアム応援ソングとしても有名に。 - 「Sting Ray」
ギターのリフが光るインスト曲。ドライブ感があり、サーフィンよりもカーレースに似合うサウンド。アクセル全開で駆け抜けるような爽快感がたまりません。 - 「Half-Time」
チアリーダーの休憩タイムを彷彿とさせるような、リラックスしたナンバー。とはいえ、根底には常にグルーヴがあり、インストバンドとしての力量を感じさせます。 - 「Grandstand Stomp」
陽気なエネルギーと観客を巻き込む一体感が光るインスト・ロックチューン。マーチング・バンド風のリズムとキレのあるギターリフが絡み合い、まるでスタジアムの熱狂をそのまま音にしたような痛快な一曲です。
アルバム総評
『Let’s Go! With the Routers』は、60年代初頭のアメリカン・ポップカルチャーの縮図とも言えるような、明快で元気いっぱいのインスト・ロック作品です。歌詞やメッセージ性ではなく、シンプルに“盛り上がる”ことにフォーカスした潔さが、むしろ時代を超えて新鮮に響きます。
一見チープにも聴こえるシンプルな構成ながら、随所に垣間見える演奏力とアレンジのセンスは確か。特にギターとホーンセクションのバランス感覚は、当時のセッション・ミュージシャンたちの実力を如実に物語っています。ノスタルジックなサウンドに酔いしれたい方にはもちろん、インスト・ロックのエネルギーを体感したいすべての音楽ファンにおすすめの一枚です。