ジーザス&メリー・チェインの3rdアルバム『Automatic』(1989年)は、彼らのディスコグラフィの中でも異色の作品として知られています。前作までのシューゲイザー的なノイズウォールとは異なり、ドラムマシンとプログラムされたベースラインを多用し、より洗練されたサウンドへと進化した一枚です。それでも、彼らの持ち味である甘美なメロディと鋭いギターのフィードバックは健在で、荒々しさとポップネスが絶妙に絡み合っています。
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アルバムの背景
1980年代半ば、The Jesus and Mary Chainはノイズとメロディを融合させた独自のスタイルでシーンを席巻しました。しかし、1987年の『Darklands』ではノイズを抑え、よりメロディックなアプローチを試みます。そして『Automatic』では、さらに電子的な要素を取り入れ、ミニマルなリズム構造の中にギターの暴力性を封じ込めるという新境地を開拓しました。このアルバムの制作では、バンドの核であるジムとウィリアム・リード兄弟がほぼすべての楽器を担当し、従来のバンドサウンドを大きく変化させています。
おすすめのトラック
- 「Blues from a Gun」
このアルバムの代表曲とも言える一曲。ドラムマシンの硬質なビートに乗せて、鋭利なギターリフと冷めたボーカルが絡み合い、機械的なクールさを持ちながらも攻撃的な雰囲気を醸し出しています。 - 「Head On」
ノイズポップの名曲であり、のちにPixiesによってカバーされたことでも有名。キャッチーなメロディと単調なビートが不思議な高揚感を生み出し、The Jesus and Mary Chainのポップセンスが光るナンバー。 - 「Halfway to Crazy」
シンプルなリズムとノイズのバランスが絶妙なトラック。サイケデリックなムードが漂いながらも、どこか哀愁のあるメロディが印象的です。 - 「Gimme Hell」
荒削りなギターと打ち込みビートの融合が独特な、ダークでクールな楽曲。アルバム全体の流れの中でもアクセントとなる一曲です。
全体の印象
『Automatic』は、それまでのThe Jesus and Mary Chainのサウンドとは異なり、リズム隊を機械化することでより研ぎ澄まされた音作りを試みています。シンプルなビートに歪んだギターを乗せることで、無機質なクールさとアナログ的な狂気が共存する独特の空気感を生み出しています。そのため、初期のフィードバック全開のサウンドを求めるファンには賛否が分かれるかもしれませんが、ポップとノイズのバランスが絶妙に取られた名盤であることは間違いありません。
結論
『Automatic』は、The Jesus and Mary Chainの進化と変化を象徴する一枚であり、シンプルながらも奥深い作品です。荒削りなノイズとポップの要素を併せ持ち、機械的な冷たさと人間的な情熱が同居するこのアルバムは、彼らのキャリアの中でも特異な位置を占めています。シューゲイザーやノイズポップの枠を超えて、新たな方向性を模索した結果生まれた、まさに実験的でありながら魅力的な作品です。