1987年にリリースされたThe Cultの3rdアルバム『Electric』は、それまでのゴシック・ポストパンク路線から劇的に舵を切り、ハードロックのど真ん中を突き進む作品として、当時のファンとロックシーンに衝撃を与えました。プロデューサーにリック・ルービンを迎えたことで、音の厚みと荒々しさが格段に向上。余計な装飾を削ぎ落とした潔いロックンロールは、彼らのアイデンティティを再定義するものでした。
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ジャンルと音楽性
『Electric』は、1970年代のAC/DCやAerosmith、Led Zeppelinの影響を色濃く受けたストレートなハードロック・アルバムです。前作『Love』までのエコー感ある幻想的なサウンドから一変し、パワフルなギターリフ、タイトなドラム、そしてイアン・アストベリーの野性的なヴォーカルが炸裂。パンクの初期衝動とハードロックの重量感が融合した、原始的かつ衝動的なサウンドが全編を貫いています。
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おすすめのトラック
- 「Love Removal Machine」
AC/DCばりのギターリフで幕を開ける、アルバムの代表曲。ルーズでありながらキレ味鋭いバッキングと、アストベリーのシャウトが見事に噛み合い、アルバムの方向性を決定づける一曲です。 - 「Wild Flower」
リフの繰り返しが耳に残る、ザ・Cult流のロックンロール・アンセム。無駄を削ぎ落としたバンド・アンサンブルが、逆にサウンドを際立たせています。 - 「Electric Ocean」
ややサイケなムードも感じさせる中毒性のあるグルーヴ。ドラムとベースが主導する中で、ギターが暴れ回るミッドテンポのナンバーです。 - 「Peace Dog」
軍歌のようなリズムとシンプルなコーラスが印象的な楽曲で、バンドの政治的・社会的な意識も垣間見える作品。ライブでも定番の一曲です。 - 「Bad Fun」
荒々しさと奔放さが魅力で、リフは鋭く、ドラムは直線的、ボーカルはワイルドに突き抜ける。AC/DC譲りのロックンロール精神を詰め込んだ一曲で、無骨でシンプルな快楽を求めるリスナーに刺さる“悪ノリ”全開のナンバーだ。
アルバム総評
『Electric』は、The Cultにとって“変化”を象徴するアルバムです。ポストパンクからハードロックへの転身は賛否を呼びましたが、その大胆なスタイルチェンジは、結果的に彼らの音楽的幅を広げることに成功しました。リック・ルービンのプロデュースが奏功し、80年代のロックバンドにありがちな過剰な装飾を排し、むき出しのロックの快楽を純粋に提示した一枚です。時代を超えて支持される、骨太で飽きの来ないロックンロールの金字塔とも言えるでしょう。