ドイツが生んだサイコビリーの暴君、Mad Sinが2010年にリリースしたアルバムが『Burn and Rise』です。1980年代から活動を続ける彼らにとって、この作品はベテランとしての円熟味と、デビュー当時と変わらぬ獰猛なエネルギーが見事に融合した一枚となっています。ジャンル特有の荒々しさやユーモアはもちろんのこと、ヘヴィメタルの要素やキャッチーなメロディも取り入れ、バンドの新たなフェーズを感じさせる、極めてパワフルで洗練された傑作です。長年のファンだけでなく、サイコビリー初心者にも自信を持っておすすめできる、まさに“燃え上がり、立ち上がる”ような熱量に満ちた作品です。
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ジャンルと音楽性
Mad Sinは、パンク、ロカビリー、ホラー映画の要素を融合させた「サイコビリー」を主軸としていますが、『Burn and Rise』ではその音楽性の幅をさらに広げています。中心となるのは、強烈にスラッピングされるコントラバスと、爆発的なギターリフ、そしてフロンタージのクアックによる野太いボーカルです。
- ヘヴィネスの増強: 従来のサイコビリーのスピード感に、ヘヴィメタルやハードコアパンクのような重量感とリフワークが加わり、サウンドに深みと攻撃性を加えています。
- 純粋なバンドサウンド: 外部の楽器に頼ることなく、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの4ピースが生み出す純粋でアグレッシブなロックサウンドに徹しており、そのエネルギーが前面に押し出されています。
- メロディのフック: 荒々しいサウンドの中にも、一度聴いたら忘れられないキャッチーなコーラスやフックが随所に仕込まれており、高い中毒性を誇ります。
おすすめのトラック
・「Burn and Rise」 アルバムタイトルを冠するオープニングトラックであり、彼らの新しいサウンドを象徴する一曲です。ヘヴィなギターリフと強烈なビートが、アルバムへの期待を一気に高めます。
・「Last Gang Standing」 タイトル通り、最後のギャングとして立ち向かうような、タフで猛々しいサイコビリーアンセムです。疾走感のあるリフと、オーディエンスを煽るようなクアックのボーカルが、このジャンルの核心的な魅力を伝えます。
・「Cursed」 呪われたかのようなダークなムードを漂わせる、ミディアムテンポの楽曲です。荘厳さと重量感のあるアレンジが施されており、Mad Sinの持つシリアスで影のある世界観を深く味わえます。
・「Back From the Morgue」 死体安置所から蘇ったかのような、ホラー要素満載のテーマを持つトラックです。バンド特有のユーモアと激しさが同居し、サイコビリーの持つロカビリー的ルーツを強く感じさせるグルーヴが特徴的です。
・「Devils Tale」 後半を盛り上げる、物語性のある歌詞とドラマチックな構成が魅力の楽曲です。パワフルなギターソロと、キャッチーながらも攻撃的なコーラスワークが、聴き手に強烈な印象を残します。
アルバム総評
『Burn and Rise』は、ベテランバンドが停滞することなく、新たな刺激を取り入れながら進化し続ける姿勢を示した会心の一作です。サイコビリーの持つ生々しい衝動を保ちつつ、サウンドプロダクションと楽曲の完成度を高めることに成功しています。野蛮な魅力と洗練された構成が同居しており、聴き終わった後には心臓が熱くなっていることでしょう。Mad Sinのキャリアにおいても、そしてサイコビリーというジャンル全体においても、重要なリファレンスとなるべきアルバムです。


