ジャマイカのヒップホップ的ダンスホール集団、Scare Dem Crewが1998年に放った『Scared From The Crypt』は、グループとしての結束と個々のパフォーマンス力を前面に押し出した、まさに90年代ダンスホール黄金期の集大成ともいえる一作。Bounty Killerとの結びつきや、Mad CobraやBeenie Manといった時代を彩った面々との共演がその熱をさらに加速させる。タイトルの「Crypt(地下墓地)」が象徴するように、彼らのサウンドは暗黒のテンションとストリートの荒々しさを併せ持ち、聴く者を圧倒する。
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ジャンルと音楽性
本作は純粋な90年代後半のダンスホール・レゲエに属しつつも、ヒップホップ的なビート構成やアグレッシブなリリックが特徴。Shocking VibesやPenthouseといったレーベルのサウンドよりも、よりラフで硬派、いわば「グロッティ」な質感が前面に出ている。グループはNitty Kutchie、Boom Dandimite、Elephant Man、Harry Toddlerから成り、それぞれがソロでも存在感を放ちながら、コンビネーションでも抜群の息の合い方を見せる。
ドラムマシン主導の鋭いリディム、暴れ回るようなディージェイスタイル、そして曲ごとに展開されるギャングスタライフやパーティーの情景描写が、まるでジャマイカ版Wu-Tang Clanを思わせる。
おすすめのトラック
- 「Scare Dem Way」
グループのテーマ的ナンバー。自己主張とシーンへの挑戦を込めた、まさにアルバムの中心的メッセージを体現する楽曲。各メンバーの持ち味がフルで展開される。 - 「Dis Scare Dem」
ヘビーなリズムに乗せて、Bounty Killerをはじめとしたメンバーが畳みかけるように威嚇と主張を叩きつける、まさに“スケア・デム(怖がらせろ)”の真骨頂。90年代ジャマイカのストリート精神がむき出しの、ド迫力ダンスホール・アンセムだ。 - 「Pure Gal」
遊び心と色気に満ちたダンスホール・チューン。軽快なリディムに乗せて、女性への賛美と奔放なライフスタイルをリリックで綴りつつ、クラブを熱狂させるエナジーはそのまま。ストリートだけじゃない、パーティーも支配する彼らの多面性が光る一曲。 - 「Scare Dem Soca」
彼ら特有のハードコアなダンスホールに、トリニダード発祥のソカの陽気なエネルギーを大胆にブレンドしたパーティーチューン。重低音と跳ねるビートが絶妙に絡み合い、攻撃的なのに陽気という絶妙なバランスを実現。
アルバム総評
『Scared From The Crypt』は、Scare Dem Crewというユニットが当時のダンスホールシーンでどれだけの存在感を放っていたかを証明するドキュメント的作品でもある。攻撃的でありながらもエンターテイメント性を備えた彼らの楽曲は、現在のバッシュメントやアフロビーツのルーツを感じさせる部分も多く、再評価されるべき一枚。ジャマイカンストリートのリアルとバイブスが詰まった、今なお鋭さを失わない歴史的アルバムだ。