デズモンド・デッカーは、ジャマイカ音楽の「Rude Boy(ルードボーイ)」カルチャーを世界に広めた先駆者です。彼の1967年の傑作アルバム『Action!』は、スカからロックステディへの移行期における重要な記録であり、その拡大版(Expanded Version)は、時代の変わり目の熱狂を余すところなく伝えています。ロックステディの洗練されたリズムとデッカーの力強いボーカルが融合した、まさに歴史的な一枚と言えるでしょう。
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ジャンルと音楽性
本作の核となるのは「ロックステディ」と呼ばれるスタイルです。これは、スカの持つ猛烈なテンポを緩め、ベースラインとドラムに重心を置くことで、よりメロウでグルーヴィーなダンスミュージックへと進化させたものです。このスタイルは、現代のレゲエの基礎となりました。
デッカーのボーカルは、力強さと感情表現に富み、特に社会的弱者や「ルードボーイ」の生活を描いた歌詞に深みを与えています。彼のバックを務めるザ・エースズ(The Aces)による流れるような美しいハーモニーが、楽曲に奥行きと洗練されたポップ感を加えており、社会的なメッセージと心地よいメロディが共存する、レゲエ誕生前夜のサウンドを確立しています。
おすすめのトラック
- 「Sabotage」
デッカーの持つ社会派な一面が強く出たトラックの一つです。重厚なベースラインと、少し影のあるメロディがルードボーイの緊張感を表現しており、ロックステディ特有のクールで揺れるグルーヴを味わえます。 - 「007 (Shanty Town)」
彼の代表曲の一つで、世界的なヒットとなりました。貧困地区に住む「ルードボーイ」の反抗的な生活を描いたシリアスな歌詞と、リズミカルでキャッチーなメロディが魅力です。 - 「Rudy Got Soul」
ルードボーイのテーマをさらに深掘りした楽曲で、デッカーの情熱的な歌声と哀愁を帯びたメロディが胸を打ちます。未来への希望と葛藤が入り混じる感情を巧みに表現しています。ザ・エースズのコーラスワークも見事です。 - 「Mother’s Young Girl」
この曲は、デッカーの持つ卓越したバラードセンスと、ロックステディの揺れるグルーヴが見事に融合したトラックです。感情を込めたボーカルが、メロディの美しさを際立たせており、彼の多面的な魅力を感じさせます。
アルバム総評
『Action! (Expanded Version)』は、単なる彼のヒット曲を集めたベスト盤ではなく、ジャマイカ音楽がスカからロックステディ、そして後のレゲエへと進化する瞬間を捉えたタイムカプセルです。デズモンド・デッカーの魅力である、エネルギッシュでありながら繊細なボーカル、そして時代の空気を反映したサウンドプロダクションは、半世紀以上経った今でも新鮮に響きます。当時の熱狂とクールなグルーヴを体感したい洋楽ファンの方々に、自信を持っておすすめできる傑作アルバムです。


