アメリカ・カリフォルニアのアンダーグラウンド・シーンから登場したRed Cross(のちのRedd Kross)。彼らが1980年にリリースしたセルフタイトルのデビューEP『Red Cross』は、当時まだ10代だったメンバーによって制作され、後にUSハードコア/パンクの伝説的存在となる萌芽を刻んだ作品だ。粗削りでスピード感あふれる演奏、反骨精神に満ちた歌詞、そしてポップカルチャーを皮肉たっぷりに引用するセンスが、この初期作からすでに全開で発揮されている。短いながらも圧倒的なインパクトを残し、後のオルタナティヴ・ロックやパワーポップにまで影響を及ぼした重要盤といえるだろう。
⬇️アマゾンミュージックで『Red Cross』をチェック⬇️
ジャンルと音楽性
『Red Cross』の音楽性は、初期ハードコア・パンクのストレートな衝動を基盤にしつつも、同時にポップなフックやユーモアを織り交ぜた独自のスタイルが特徴だ。ブラック・フラッグやサークル・ジャークスといったL.A.ハードコア勢と同時期に活動していたものの、Red Crossはシリアス一辺倒ではなく、映画やテレビ文化をモチーフにしたり、遊び心を加えたスタンスが異彩を放っていた。わずか数分、いや1分台の曲も多いが、その短い中で強烈なエネルギーとメロディセンスを感じさせる点がユニークだ。
おすすめのトラック
- “Cover Band”
バンドの姿勢を象徴するような、アイロニカルでストレートなパンク・チューン。演奏は荒々しいがキャッチーさもあり、タイトル通り音楽業界への風刺を感じさせる。 - “Clorox Girls”
1分に満たないスピードナンバーながら、疾走感とメロディが両立した代表曲。Red Crossらしいユーモアとパンクの衝動が凝縮された楽曲だ。 - “Standing in Front of Poseur”
シーンへの皮肉を込めた歌詞と、勢いで突っ走るサウンドが印象的。シンプルだがエッジの効いたギターが耳に残る。 - “Annette’s Got the Hits”
彼らの初期を代表するキャッチーな楽曲。ポップカルチャーへのオマージュとパンクの荒削りさが絶妙に混ざり合い、後のRedd Krossの方向性を示唆している。 - “Rich Brat”
タイトル通り反骨精神に満ちた内容を、ユーモラスかつ攻撃的にぶつける楽曲。初期パンクならではのストレートな表現が光る。
アルバム総評
『Red Cross』は、ハードコア・パンク黎明期に生まれた若さゆえの勢いと、Red Crossならではのユーモアが詰まった作品である。収録時間は短いが、その中でバンドの独自性とカリスマ性がはっきりと示されており、同時代のシリアスなハードコアと一線を画す魅力を放っている。後にオルタナティヴやパワーポップの方向へと進化していくバンドの初期衝動を体感できる一枚であり、USインディーズ・パンクの歴史を語る上で欠かすことのできない記念碑的アルバムといえるだろう。