L7/Bricks Are Heavy
「お行儀の良いポップスや、着飾ったヘヴィメタルにはもう飽き飽きだ。もっと泥臭くて、骨太で、心臓を直接揺さぶるような爆音ロックが聴きたい!」 そんな退屈にまみれたオルタナ・キッズやパンク・ジャンキーたちの脳髄を完璧にぶち抜くのが、L7の『Bricks Are Heavy』です。 彼らが本作で鳴らすのは、LAのストリートで培われたリアルな焦燥、反逆、および男性優位の社会に中指を立てるような強固な信念。 骨盤の底に響くような極太の低音ベースと、チェーンソーのようにザラついたツインギターが爆走し、スピーカーから放たれる圧倒的な熱量が、あなたの部屋を一瞬にしてまばゆいモッシュピットへと変貌させます。
ジャンルと音楽性
本作の音楽ジャンルは、王道の「グランジ(Grunge)」「オルタナティヴ・ロック(Alternative Rock)」、および牙を剥くような「パンク・ロック/ライオット・ガール(Riot Grrrl)」に分類されます。 最大の特徴は、あまりにも極悪でヘヴィな「ダウンチューニング・ギターの壁」と、一度聴いたら脳裏から離れないキャッチーなメロディラインの融合です。 ニルヴァーナやマッドハニー、あるいはモーターヘッド直系のタフで男勝りな爆走ビートをベースにしつつ、ブッチ・ヴィグによる非常に立体的でスマートなプロデュースワークが施されたことで、激しく歪んだアンサンブルでありながらも、極めてソリッドで大衆に響くフックを獲得することに成功しています。

L7/Bricks Are Heavy
おすすめのトラック
- 「Pretend We’re Dead」彼らの名を一瞬にして世界中のロックシーンに決定づけた、90年代オルタナティブ・ロックを代表する不滅のメガヒット・アンセムです。耳を劈くジャンキーなファズギターのイントロから始まり、気だるげでハスキーなヴォーカルが冷ややかに滑り抜けます。「僕たちが死んだフリをすればいい」と歌うサビでのシンプル極まりないリフレインは、一度聴いたら一生頭から離れなくなるほどの強烈な多幸感と中毒性を秘めています。
- 「Mr. Integrity」社会の欺瞞や「誠実さ(Integrity)」を押し売りしてくる偽善者たちを、強烈な皮肉を交えて一蹴するアルバム屈指のスタイリッシュ・ガレージロックです。小気味よく歪んだツインギターによるキャッチーなリフと、軽快ながらもどこか不穏さを残すタイトなビートが絶妙な調和を描きます。ボーカルのハスキーでドスの効いた歌唱スタイルが、中盤に向けて鋭利に引き裂かれるソロパートへとスリリングにビルドアップしていく、彼女たちの極めて知的なセンスが光る名曲です。
- 「Everglade」レッドネック(田舎の荒くれ者)たちとのトラブルをテーマにした、ずっしりと重厚なモッシュ・ビートが心地よい傑作ハードコア・ナンバーです。バチバチと跳ね回る重低音ベースの上を、エッジの効いたギターワークと、シンガロングを誘うタフなコーラスワークが完璧なアンサンブルを描きます。男気溢れる力強さと、ストリートのバイブスが完璧に融合したアルバム前半のハイライトを飾る1曲です。
- 「Wargasm」戦争をポルノ(オーガズム)と同等に消費する現代社会やメディアの暴走を、皮肉たっぷりに風刺したプロテスト・ロックです。チープなサイレンのSEからなだれ込む不穏なギターリフと、地を這うような鈍く重たいドラミング。ただ激しいだけでなく、ジャーナリスティックで冷徹な知性が息づいており、彼女たちが単なる暴れん坊ではなく、極めてクレバーな表現者であることを強烈に証明しています。
アルバム総評
L7の『Bricks Are Heavy』は、1990年代前半という「オルタナティブ・ロックが最も獰猛で、そして最もピュアに輝いていた瞬間」を、これ以上ないほどスタイリッシュに真空パックした奇跡の名盤です。 ここにあるのは、デジタルで綺麗に整えられたお行儀の良いラウンジ・ミュージックではなく、汗とビールの匂い、未来への純粋な怒り、そしてどんな不条理な日常も最高にタフなステップで乗り越えていくアティテュード(姿勢)そのものです。
耳に残る完璧なファズのフック、スロウで心地よい重低音の快楽、そしてスピーカーから吹き出す生のエネルギー。これらは、現在の90s・Y2Kレトロ再評価の流れにも完全にフィットします。ニルヴァーナやホール(Hole)、バッド・ブレインズを愛するすべての人にとって、これは一生モノのコレクションとして手元に置いておくべき究極のマスターピースです。さあ、スピーカーのボリュームをいつもより少し大きめにして、彼女たちの極上爆走ビートに魂を委ねてみてください。
🎵Mr.INTEGRITY


