1977年、ロンドンのパンクとモッズの狭間から登場したThe Jamは、デビュー作『In the City』によって鮮烈な印象を刻みつけました。ポール・ウェラー率いるこのトリオは、パンクロックのエネルギーとモッズの美学を融合させ、若者の不安や怒り、都市生活のリアルをスピーディに描き出します。全体を通してシャープで生々しい演奏が際立ち、デビュー作とは思えない完成度を誇ります。
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ジャンルと音楽性
『In the City』は、1970年代後半のUKパンクシーンに身を置きながらも、The WhoやSmall Facesといったモッズ系60’sバンドへの強いオマージュを感じさせる音作りが特徴です。パンク特有の鋭さと、モッズのメロディアスな側面を融合させたハイブリッドな音楽性が光ります。ギターの切れ味は鋭く、リズム隊は疾走感に溢れ、ポール・ウェラーのヴォーカルは若さゆえの鋭さと、どこか憂いを帯びた視点を同時に持ち合わせています。
おすすめのトラック
- 「In the City」
タイトル曲にしてバンドの代表曲のひとつ。疾走感あふれるドラムとコードカッティングが耳に突き刺さる。若者のエネルギーと街への憧れ、不満、希望が入り混じったリリックも印象的。 - 「Art School」
パンク的な挑発精神が炸裂したナンバー。美術学校というテーマの裏に、既成概念への反発と自己表現の葛藤が表現されており、当時の若者文化を象徴するような1曲。 - 「Away from the Numbers」
アルバム中でも異彩を放つミドルテンポの楽曲。より内省的でメロディアスな構成が、後のThe Jamの進化を予感させる。社会の枠組みに囚われず生きようとする意志が歌詞に込められている。 - 「Sounds from the Street」
アグレッシブなギターとラフなヴォーカルが印象的な一曲。タイトル通り、ストリートから湧き上がるリアルなサウンドを詰め込んだ、都市型ロックの真骨頂。 - 「Slow Down」
ラリー・ウィリアムズのR&Bクラシックを彼ら流に再構築した、エネルギッシュでタイトなロックンロール・ナンバー。ポール・ウェラーの鋭いギターとスピード感のあるドラムが、原曲にパンク的な攻撃性を加え、70年代UKロックの荒々しさを体現している。カバーながらも、彼らのスタイルがしっかり刻まれた、勢いに満ちた佳曲。
アルバム総評
『In the City』は、The Jamが単なるパンクバンドではないことを証明した記念碑的デビュー作です。ポール・ウェラーのソングライティングはすでに鋭く、都市生活の断片や若者の苦悩をストレートに描写しながらも、音楽的な洗練さと知性が感じられます。全体的に短くタイトな楽曲で構成されており、その緊張感がアルバムに独特の推進力を与えています。パンクとモッズの精神を絶妙にブレンドしたThe Jamは、70年代末のUK音楽シーンにおいて独自のポジションを確立したのです。