スコットランド出身のシンガーソングライター、Lewis Capaldiが2023年に発表したセカンドアルバム『Broken By Desire To Be Heavenly Sent』は、彼の持ち味である感情をむき出しにしたバラード群と、心を揺さぶるメロディを中心に構成された作品だ。デビュー作『Divinely Uninspired to a Hellish Extent』で世界的な成功を収めたCapaldiが、再び自分の歌声とソングライティングの力に正面から挑んだアルバムであり、華美なアレンジよりも彼の生々しい表現力に焦点を当てている。タイトルが示すように、切実で痛みに満ちつつも、美しい余韻を残す一枚となっている。
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ジャンルと音楽性
本作は基本的にポップ・バラードを軸にしているが、そのサウンドにはソウル、オルタナティヴ、アコースティックの要素が取り込まれている。プロダクションはシンプルながらも緻密で、ピアノやアコースティックギターを主体にしたミニマルなアレンジが多い。これにより、Capaldiのハスキーで力強いヴォーカルが前面に押し出され、歌詞の持つ切実さがストレートに伝わってくる。愛や喪失、孤独といった普遍的なテーマを飾らずに表現する姿勢が、彼の音楽の大きな魅力だ。
おすすめのトラック
- “Forget Me”
アルバムのリードシングルで、失恋の痛みを鮮烈に描いた一曲。ポップなメロディにのせて「忘れないでほしい」という切実な想いを歌うCapaldiの姿が胸を打つ。 - “Pointless”
エド・シーランとの共作でも知られる楽曲。ピアノを基調としたアレンジの中で、愛する人の存在がいかに人生を意味づけるかをストレートに歌い上げる、感動的なラブソング。 - “Wish You The Best”
穏やかなメロディラインが心地よいが、歌詞は別れた相手への深い想いを込めたもの。切ないが温かみのある歌唱が、彼の表現力の豊かさを示している。 - “How I’m Feeling Now”
アルバムのラストを飾る内省的なトラック。シンプルなアレンジと心の奥底を吐露するような歌詞が相まって、作品全体を象徴するエモーショナルな締めくくりとなっている。
アルバム総評
『Broken By Desire To Be Heavenly Sent』は、Lewis Capaldiが自身の強みを最大限に引き出したアルバムであり、派手さよりも誠実さと感情表現を重視した作品だ。彼の歌声はときに荒々しく、ときに繊細で、聴く者の心に直接触れる力を持っている。楽曲の多くがバラード中心であるため、派手な変化や実験性を求めるリスナーには単調に映るかもしれないが、その代わりに一貫して深い感情の共鳴を届けてくれる。失恋や孤独を抱えるときに寄り添い、心を癒す一枚として、またCapaldiというアーティストの真価を改めて感じさせる作品として高く評価できるだろう。