ニューオーリンズ・ソウルを語る上で欠かせないシンガー、Lee Dorsey。彼が1971年にリリースしたアルバム『Freedom for the Funk』は、アメリカ南部特有の湿度を帯びたリズムと、力強いヴォーカルが融合した名盤として知られる。プロデュースと演奏は盟友Allen ToussaintとThe Metersが担当しており、ソウル、ファンク、R&Bの要素が絶妙に混ざり合ったサウンドが展開される。60年代には「Ya Ya」や「Working in the Coal Mine」などのヒットで知られたDorseyだが、本作ではよりファンキーかつグルーヴィーな世界へと歩みを進めている。
ジャンルと音楽性
『Freedom for the Funk』はその名の通り、ファンクを基盤に据えながらも、ソウルの人懐っこさやリズム&ブルースの泥臭さを兼ね備えたアルバムだ。Allen Toussaintによる巧みなソングライティングとアレンジ、そしてThe Metersの鉄壁のリズム隊がDorseyの声を支え、曲ごとに異なるグルーヴを生み出している。軽快なビートに乗せてシンプルで覚えやすいフックを繰り返すスタイルは、聴き手の体を自然に動かす力を持っており、ニューオーリンズ・ファンクの真髄を感じさせる。
おすすめのトラック
- “Occapella”
アルバムを代表する陽気なナンバーで、シンプルな掛け声やリズムの繰り返しが耳に残る。タイトルの通り声をリズム楽器のように使い、まるで即興のジャムセッションのような楽しさが溢れている。 - “Sneakin’ Sally Through the Alley”
Allen Toussaintによる名曲で、後にRobert Palmerもカバーした名高いトラック。軽快なギターリフと跳ねるリズムに、Dorseyのユーモラスで力強い歌声が加わり、アルバム中でも特にファンク度の高い一曲。 - “Can You Hear Me”
温かみあるヴォーカルとニューオーリンズならではの軽快なリズムが心地よいソウル・ナンバー。シンプルでキャッチーなメロディが耳に残り、日常の中でふと口ずさみたくなる親しみやすさを持っている。 - “Ride Your Pony”
代表的ヒット曲のひとつで、ファンキーで跳ねるようなリズムとキャッチーなフレーズが魅力のナンバー。The Metersの前身ともいえるミュージシャン陣によるタイトな演奏に、Dorseyの人懐っこい歌声が重なり、ニューオーリンズ・ソウルの楽しさと勢いをそのまま体現している。シンプルながらも強烈に印象に残る一曲だ。
アルバム総評
『Freedom for the Funk』は、Lee Dorseyがシンガーとして持つチャーミングな個性と、Allen Toussaint&The Metersの卓越した演奏が完璧に融合したアルバムだ。ファンクの解放感とソウルの温かさを同時に味わえる本作は、聴く者に自然と笑顔とリズムをもたらす。70年代初頭のニューオーリンズ・ファンクを知る上で欠かせない作品であり、同時にDorseyのキャリアを彩る重要な一枚として高く評価されている。音楽を楽しむ純粋な喜びを詰め込んだ本作は、まさに「自由のためのファンク」と呼ぶにふさわしい。