The Stranglers『Black and White』
1978年、パンク・ロックが急速に多様化し、ポストパンクへと移行しつつある混沌とした時代にリリースされたのが、ザ・ストラングラーズの3枚目のアルバム『Black and White』です。デビュー以来、その高い演奏技術と攻撃的なキャラクターで異彩を放っていた彼らが、本作ではより実験的で冷徹な世界観を提示しました。タイトルの通り、白と黒、光と影、そして論理と狂気が入り混じる本作は、全英チャート2位を記録し、彼らの黄金期を決定づける一枚となりました。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは「パンク」の括りにありながら、実質的には「ポストパンク」や「ニュー・ウェイヴ」の先駆けと言えます。最大の特徴は、ジャン・ジャック・バーネルによる、リード楽器のように唸りを上げる硬質なベースサウンドです。そこにデイヴ・グリーンフェイドのクラシック音楽を背景とした華麗かつ不穏なシンセサイザーが絡み合います。変拍子の導入や複雑な展開、そして冷笑的な社会批判を込めた歌詞は、当時の短絡的なパンク・バンドとは一線を画す、高度な知性と音楽性を証明しています。
おすすめのトラック
- 「Tank」 アルバムの幕開けを飾る、重戦車が突き進むような力強いナンバーです。軍国主義を揶揄した歌詞と、シンクロするタイトなリズム隊が圧倒的な緊張感を生んでいます。これぞストラングラーズと言える、硬派なドライヴ感が堪能できる1曲です。
- 「Nice ‘n’ Sleazy」 レゲエ/ダブの影響を感じさせる粘り気のあるリズムに、デイヴの奇怪なシンセサイザーの音が乗る、まさに「嫌らしくも格好いい」名曲です。パンクの攻撃性を保ちつつ、実験的なグルーヴを完成させた、彼らの音楽的進化を象徴するトラックです。
- 「Curfew」 変拍子を駆使した複雑な構造が特徴的な、ポストパンクの精神を体現した楽曲です。ジャン・ジャックのベースが旋律を支配し、聴く者を不安に陥れるような緊迫した空気感が漂います。彼らの演奏スキルの高さが遺憾なく発揮されています。
- 「Death and Night and Blood (Yukio)」 三島由紀夫の小説からインスピレーションを得た、非常にダークで哲学的な楽曲です。サックスが吹き荒れるノイジーな終盤へと向かう構成は圧巻で、当時の彼らが持っていた過激なまでの芸術性と、異文化への深い関心が伺える重要作です。
アルバム総評
『Black and White』は、ザ・ストラングラーズというバンドが単なる「乱暴なパンク・バンド」ではなく、極めて鋭利な洞察力を持った音楽家集団であることを世に知らしめた金字塔です。
初期の粗削りなエネルギーは、ここでは研ぎ澄まされたナイフのような冷たい殺気へと昇華されています。ベースが楽曲をリードし、キーボードが空気を支配するという彼ら独自の方程式は、本作で一つの頂点に達しました。40年以上経った今聴いても、その音の厚みと実験的な精神は全く色褪せていません。パンクの魂とプログレッシヴな技法が奇跡的に融合した、ロック史に残るべきモノクロームの傑作です。



