カナダのインディー・ロック界の重鎮、The New Pornographersのフロントマンとして知られるA.C. Newmanが、2004年にリリースした初のソロアルバム『The Slow Wonder』は、彼のポップ・センスと職人技が凝縮された珠玉の一枚。バンド活動で培った多層的なメロディと、よりパーソナルな音楽表現が融合し、独自の魅力を放つ作品となっている。
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ジャンルと音楽性
『The Slow Wonder』は、パワーポップ、インディー・ロック、バロック・ポップといったジャンルの要素を巧みにミックスした作品でありながら、決して過剰にならず、コンパクトで聴きやすい仕上がり。A.C. Newman特有のコード進行やメロディ運び、そして時折挿入される予想外のアレンジが、シンプルな構成の中に深みを生んでいる。
軽快なギターリフ、60年代的なポップ感覚、そしてどこか懐かしさを感じさせるコーラスワークは、聴く者の耳を心地よく刺激しつつも、歌詞の内省的な側面がアルバムに奥行きを与えている。
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おすすめのトラック
- 「Miracle Drug」
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、明快なメロディとドライヴ感のあるビートが印象的。耳馴染みの良いメロディラインが、A.C. Newmanのソングライティングの真骨頂を示している。 - 「Drink to Me, Babe, Then」
フォーク的な要素とポップな感性が共存する佳曲。アコースティックギターとリズミカルなドラムが心地よく、リリカルな歌詞と甘さを抑えたヴォーカルが絶妙にマッチしている。 - 「The Town Halo」
The New Pornographersの影を感じさせるエネルギッシュなナンバー。アグレッシブなテンポとオルガンの音色が絡み合い、躍動感に満ちたトラックとなっている。 - 「Secretarial」
短くも鮮やかなメロディが光るこの曲は、アルバムの中でも特にキャッチー。60年代ポップスに通じる軽快なノリと、現代的なアレンジのバランスが心地よい。 - 「Come Crash」
内省的な雰囲気を持つラストトラックで、アルバム全体を静かに締めくくる。シンプルな構成と淡々とした歌唱が、逆に強い印象を残す珠玉の1曲。
アルバム総評
『The Slow Wonder』は、ポップミュージックへの深い愛情と、独自の音楽的視点が見事に結晶化した作品。The New Pornographersのファンにとっては新鮮な一面を、またインディー・ロック初心者にとっても親しみやすい入り口を提供してくれるアルバムである。
派手さはないが、聴けば聴くほど味わいが増すその魅力は、「ゆっくりと驚きをもたらす」というタイトル通り。A.C. Newmanの音楽家としての器用さと誠実さが光る、静かで確かな傑作だ。