DeBargeのアルバム『Rhythm of the Night』は、1985年にMotownレコードからリリースされました。このアルバムは、それまでの彼らのトレードマークであった内省的なバラード路線を維持しつつも、外部の著名なプロデューサー(リチャード・ペリー、ジョルジオ・モロダーなど)やソングライター(ダイアン・ウォーレン)を大胆に起用し、よりポップでダンス志向の強い方向へと舵を切りました。この戦略は見事に成功し、特に映画『The Last Dragon』のサウンドトラックにも採用されたタイトル曲「Rhythm of the Night」は全米チャートで大ヒットを記録。この一作で、DeBargeはR&Bファンだけでなく、幅広い層にアピールする「モータウンを代表するファミリー・アクト」としての地位を確立しました。
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ジャンルと音楽性
本作の基盤は80年代のR&Bとソウルですが、その上にダンス・ポップ、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)、そしてカリプソの影響を受けたトロピカルなファンクの要素が混ざり合っています。特にタイトル曲のカリプソ風のリズムや、「Prime Time」のようなグルーヴィなファンクネスは、モータウンの先輩であるライオネル・リッチーの成功(「All Night Long」)を踏襲した、クロスオーバーを強く意識したサウンドです。グループのリードボーカルであるエル・デバージの、Modal Tenor(モーダル・テナー)と呼ばれる中音域から、突き抜けるようなファルセットまでを駆使した表現力豊かな歌声が、洗練されたアレンジの中で光っています。
おすすめのトラック
- 「Rhythm of the Night」
ダイアン・ウォーレンのブレイクスルーとなった、グループ最大のヒット曲です。スチールパンの音色が心地よいトロピカルなダンス・ポップで、聴く者すべてをダンスフロアへと誘うような、底抜けに明るい雰囲気が魅力です。エルのファルセットが華やかに曲を彩ります。 - 「Who’s Holding Donna Now?」
映画『The Last Dragon』から生まれたもう一つのヒット曲であり、デバージが得意とする哀愁漂うパワー・バラードです。エル・デバージの感情豊かなボーカルと、ドラマティックで美しいメロディラインが印象的で、R&Bチャートで2位を記録しました。 - 「Prime Time」
アルバムのオープニングを飾るグルーヴィなナンバー。当時の80年代らしいシンセサイザーとエレクトロ・ファンクの要素が強く、エル・デバージの巧みなボーカルと相まって、高揚感のあるダンス・トラックとして非常に完成度が高いです。 - 「You Wear It Well」
軽快なポップ/R&Bトラックで、この曲は全米ホット・ダンス・クラブ・プレイ・チャートで1位を獲得しました。キャッチーなサビと、タイトなリズム・セクションが特徴で、デバージのポップ・サイドを象徴する一曲です。 - 「Single Heart」
この曲はもともと映画『D.C. Cab』のために録音され、本作に再収録されました。ミディアムテンポでメロディックなR&Bナンバーであり、前作までのデバージの作風を感じさせる、心に染み入る美しいバラードです。
アルバム総評
『Rhythm of the Night』は、DeBargeという才能あるファミリー・グループが、80年代のメインストリーム・ポップ市場で成功するために、サウンドを戦略的に進化させた結果生まれたアルバムです。純粋なソウルミュージックとしての評価は分かれるかもしれませんが、ポップミュージックの観点から見れば、エル・デバージの非凡なボーカルと、時代を捉えた洗練されたプロダクションが完璧に融合した名盤であり、80年代モータウンを代表する輝かしい作品として今も愛され続けています。


