Zeke『’Til the Livin’ End』
パンク・ロックの歴史において、「速さ」と「重さ」を極限まで追求したバンドは数多く存在しますが、シアトルが生んだ怪物「Zeke(ジーク)」の右に出る者はいないでしょう。2004年にリリースされたアルバム『’Til the Livin’ End』は、彼らのキャリアの中でも最高傑作のひとつに数えられる一枚です。モーターヘッドの凶暴性と、ハードコア・パンクの瞬発力を掛け合わせ、1分前後の短尺曲をマシンガンのように連射するスタイルは、聴く者のアドレナリンを沸騰させます。本作は、まさにブレーキの壊れたダンプカーが全速力で突っ込んでくるような、衝撃的なリスニング体験を約束します。
ジャンルと音楽性
本作の音楽性は、ハードコア・パンク、スピード・メタル、そして荒々しいパンクン・ロール(Punk ‘n’ Roll)が融合した究極のハイブリッド・サウンドです。AC/DCのような骨太なロックンロールのグルーヴを、スラッシュ・メタルのスピードで叩きつけるその様は、まさに「世界で最も速いロックンロール」の称号にふわさしいものです。ブラインド・マーク・ドンの野太く咆哮するボーカルと、驚異的な速弾きを披露するギターソロは、単なるパンクの枠を超え、高度なテクニックに裏打ちされた唯一無二の「Zekeサウンド」を確立しています。
おすすめのトラック
- 「’Til the Livin’ End」 開始数秒でアクセルを全開に踏み込み、一気にトップスピードへと誘うこの曲は、本作の方向性を象徴するアンセムです。
- 「All Night Long」 深夜の荒野を爆走するかのようなドライブ感溢れるナンバー。無骨なリフと、一切の妥協を許さないビートが、聴く者の理性を一瞬で奪い去ります。
- 「On Through the Night」 夜通し轟音を鳴らし続けるバンドの姿勢を体現したかのような一曲。スピードを落とすことなく展開されるアンサンブルは、もはや様式美の域に達しています。
- 「383」 排気量の大きなエンジンが唸りを上げるような、ヘヴィかつ高速なトラック。Zeke特有の「重戦車が時速200キロで走る」ようなパワーを最も体感できる楽曲です。
- 「Never Goin’ Home」 「もう家には帰らない」という覚悟すら感じさせる、刹那的な熱量に満ちたナンバー。アルバム終盤に向けてボルテージを最高潮に引き上げる、怒涛の疾走感が魅力です。
アルバム総評
『’Til the Livin’ End』は、全15曲をわずか20分強で駆け抜ける、極めて純度の高いパンク・ロック・アルバムです。一瞬の隙も、無駄な装飾も一切排除し、ただひたすらに「速く、激しく、楽しく」というロックの本質を追求しています。このアルバムには、現代の音楽が忘れがちな「剥き出しの情熱」と「圧倒的なスピードへの渇望」が詰まっています。20年以上経った今でも、スピーカーから流れるその音は一切色褪せることなく、私たちの日常を爆音で破壊し、再構築してくれます。



