The Sorrowsのデビュー・アルバム『Take A Heart』(1965年)は、ブリティッシュ・ビートの流れを受け継ぎつつ、さらに荒々しいガレージ感覚と攻撃的なサウンドを前面に押し出した作品だ。当時のUKロック・シーンにおいては、The KinksやThe Pretty Thingsといったラフな音像を持つバンドと並び称される存在であり、そのダークなムードとエッジの効いた演奏で、後にガレージ・パンクやプロト・パンクの源流として再評価されるきっかけとなった。初期ブリティッシュ・ロックの中でも、ひときわアンダーグラウンドな響きを放つ重要作である。
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ジャンルと音楽性
『Take A Heart』は、ブリティッシュ・ビート、リズム&ブルース、ガレージ・ロックといった要素が絶妙に融合したサウンドを展開している。煌びやかでキャッチーなメロディを重視するよりも、むしろ荒削りでソリッドなギターリフや、重たく鳴り響くリズムを強調している点が特徴だ。リード・ヴォーカルのドン・ファーニスの声は鋭さと不良っぽいニュアンスを兼ね備え、楽曲全体に緊張感を与えている。サイケデリック以前のロックにおいて、ここまでダークで反抗的なサウンドを構築していた点は、まさに先駆的と言える。
おすすめのトラック
- 「Take A Heart」
アルバムのタイトル曲であり、The Sorrowsの代表曲。緊張感あふれるリフと陰鬱なムードが漂い、60年代のビート・シーンの中でも異彩を放つナンバー。パンク的な荒々しさが色濃く反映されている。 - 「Baby」
ストレートなビートとキャッチーさを兼ね備えた一曲。ラフで勢いのある演奏が前面に出ており、ライブ感覚をそのままパッケージしたような迫力を感じさせる。 - 「Come With Me」
明るさとダークさが同居するような独特のグルーヴが印象的。ポップさを持ちながらも、どこか尖った雰囲気を崩さない点にThe Sorrowsの個性が光る。 - 「Teenage Letter」
元々はBlues曲にルーツを持つナンバーだが、The Sorrowsはそれを荒々しいビートと共に再構築。若者の反抗心を体現するようなストレートさが魅力。 - 「We Should Get Along Fine」
ハードエッジなギターと疾走感が印象的な一曲。のちのガレージ・パンクに通じる攻撃的なサウンドが前面に出ている。
アルバム総評
The Sorrowsの『Take A Heart』は、1960年代ブリティッシュ・ビートの流れを踏まえつつ、その枠を飛び越えた荒削りなエネルギーとダークな響きを封じ込めた一枚だ。彼らは大きな商業的成功を収めたわけではないが、その音楽性は後にガレージ・ロックやパンクに影響を与えた重要な存在であり、再評価に値する。洗練よりも衝動を、整然とした構成よりも爆発的な勢いを優先したこのアルバムは、60年代のアンダーグラウンドな空気を体現した記録であり、今なお新鮮に響く力強さを持っている。