Le Tigreの2004年のアルバム『This Island』は、彼女たちのディスコグラフィーの中でも特にポップな要素が際立つ作品でありながら、政治的・フェミニズム的なメッセージを鋭く打ち出した意欲作です。1990年代後半から活動を続けてきたLe Tigreは、ライオット・ガール・ムーブメントの流れを汲みながらも、シンセポップやエレクトロの要素を積極的に取り入れた独自の音楽性でシーンを席巻しました。本作では、彼女たちの特徴的なDIY精神を残しつつ、メジャーレーベルへ移籍したことによるプロダクションの洗練度が加わり、よりキャッチーでダンサブルなサウンドへと進化しています。
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ジャンルと音楽性
『This Island』は、エレクトロ・パンク、ダンス・パンク、シンセポップ、インディー・ロックといった要素を融合させたアルバムです。アグレッシブなギターリフ、パワフルなビート、シンセサイザーのキラキラとした音色が交錯し、Le Tigreならではのエネルギッシュなサウンドを生み出しています。
アルバム全体を通して、カラフルでポップな側面と、鋭い社会批判が共存しているのが特徴です。リスナーを踊らせるようなキャッチーなフックと、パンクの持つ反骨精神が見事に融合しており、クラブミュージックのような高揚感と、ライオット・ガールの精神を感じさせるメッセージ性が同時に楽しめる作品となっています。
おすすめのトラック
- 「TKO」
アルバムのリードシングルであり、最もキャッチーなダンス・パンクナンバー。エネルギッシュなビートと中毒性のあるメロディが特徴で、クラブ向けのキラーチューンとしても機能します。タイトルの「TKO(テクニカルノックアウト)」の通り、戦う姿勢を貫くLe Tigreのパワーが詰まった一曲。 - 「New Kicks」
2003年の反戦デモの音声をサンプリングした、強烈なメッセージ性を持つトラック。戦争や不正に対する抗議の声を直接楽曲に取り入れることで、リスナーに社会問題を突きつける構成となっています。音楽的にも疾走感があり、Le Tigreの持つ政治的アプローチを象徴する一曲です。 - 「After Dark」
シンセポップ的な美しさが際立つ楽曲で、Le Tigreの中では比較的メロウな雰囲気を持つ一曲。ダンスフロア向けのビートがありつつも、夜の都会のムードを感じさせる洗練されたサウンドが魅力。 - 「Viz」
LGBTQ+コミュニティに向けた強いエンパワーメントのメッセージを持つ楽曲。パワフルなリリックとエレクトロ・パンクの攻撃的なサウンドが見事に融合し、自分らしさを貫くことの大切さを訴えています。 - 「Tell You Now」
ポップパンク的な要素を感じさせる、キャッチーで勢いのあるナンバー。タイトル通り、ストレートなメッセージが詰まっており、Le Tigreらしいパンチのある楽曲となっています。
アルバムの魅力と全体の印象
『This Island』は、Le Tigreがより幅広いリスナーにアプローチするために、キャッチーで洗練されたプロダクションを取り入れたアルバムです。過去作のローファイでDIY感あふれる作風と比較すると、よりダンサブルでポップな側面が強調されていますが、決してメッセージ性を失っているわけではありません。フェミニズムやLGBTQ+の権利、反戦といったテーマを堂々と掲げつつも、それを難解にするのではなく、ダンスミュージックとして楽しめる形に落とし込んでいる点が本作の大きな魅力です。
また、当時のインディー・ダンスシーンの流れとも合致しており、エレクトロ・クラッシュやニューレイヴのようなスタイルを先取りした作品とも言えます。ピッチフォークやインディー・クラブカルチャーに根ざしつつも、メジャーなポップミュージックの世界に足を踏み入れたLe Tigreの野心を感じさせる一枚です。
まとめ
Le Tigreの『This Island』は、エレクトロ・パンクのエネルギッシュな魅力と、社会的メッセージを兼ね備えたアルバムです。キャッチーなシンセサウンドとダンサブルなリズムにのせて、フェミニズムや政治的なテーマを訴えるという独自のアプローチが光ります。
「TKO」や「After Dark」のようなポップな楽曲から、「New Kicks」のような社会的メッセージが強い楽曲まで、幅広い魅力を持つ本作は、彼女たちの音楽性を知る上でも最適な一枚。ダンスフロアで楽しめるだけでなく、聴くたびに新しい発見がある、エッジの効いた作品と言えるでしょう。