Rock/Alternative

エイウォルネイションが『The Phantom Five』で描き出すのは、希望と絶望の狭間を彷徨う“ファントムたち”の物語。エレクトロとロックが融合した緊張感あふれるトラック群は、リスナーをどこまでも高揚させる

異端と情熱の電撃融合。AWOLNATIONが2024年にリリースした『The Phantom Five』は、バンドのアイデンティティとも言えるエレクトロ・ロックの核を保ちつつ、よりシネマティックでダークな世界観に深化した最新作だ。ポストパンキッシュなエネルギーとダンスビートの高揚感がせめぎ合うこの作品は、まさに幻影のように姿を変えながら聴き手を翻弄し、魅了する。
Pop/Soul/Jazz

ヴァンス・ジョイが『In Our Own Sweet Time』で紡ぎ出すのは、時間や距離に縛られない“ふたりだけの物語”。アコースティックなぬくもりと繊細な言葉が、あなたの日常にそっと寄り添う

オーストラリアのシンガーソングライター、Vance Joy(ヴァンス・ジョイ)が2022年にリリースした『In Our Own Sweet Time』は、パンデミックによって変わりゆく日常の中で、「愛」や「つながり」がいかに人を支えるかを優しく描いた作品です。3作目となるこのアルバムは、どこか懐かしく、同時に現代的なポップ・フォークのサウンドを通して、温もりと希望を丁寧に編み上げています。
House/Electronic

イエローの『Stella』は、スイスの電子音楽デュオが放つ、冷たくも艶やかなサウンドの洪水!機械仕掛けのビートと官能的なボーカルが織りなす、80年代エレクトロ・ポップの最前線を更新したアルバム

スイス出身の電子音楽デュオ、Yello(イエロー)が1985年にリリースした4枚目のアルバム『Stella』は、彼らにとって大きな転機となった作品だ。初めて世界的な成功を収めたこのアルバムは、エレクトロニカの斬新な可能性を提示しながらも、どこかポップで親しみやすい仕上がり。奇抜なサウンドと洗練されたプロダクションが融合した本作は、今なお80年代電子音楽の代表格として高く評価されている。
Pop/Soul/Jazz

グルーヴと魂が交差する、時代を超えるファンクの宇宙!アース・ウィンド・アンド・ファイアーの『Raise!』は、ディスコの余韻をまといながら、煌びやかで力強いサウンドの旅路

1981年にリリースされたEarth, Wind & Fireのアルバム『Raise!』は、バンドの黄金期を彩る名作のひとつ。ディスコブームが下火になりつつあった時代に、ソウル、ファンク、R&Bを融合させた洗練されたサウンドで、音楽シーンに確かな存在感を放った。モーリス・ホワイト率いるバンドのクリエイティブなエネルギーと、壮大なサウンドスケープが詰まった一枚だ。
Pop/Soul/Jazz

ザカリー・ノウルズの『tendency to be a loner』は、 孤独という静かな居場所で、自分と向き合いながら見つける”やさしい音の灯火”。寂しさを否定せず、言葉にならない心のざわめきをそっと抱きしめる、夜のためのポップソウル

Zachary Knowlesの『tendency to be a loner』は、静かに心を打つエモーショナルなアルバムだ。孤独、自己内省、そして繊細な心の揺れをテーマに、ミニマルでメロウなサウンドが展開される本作は、現代のBedroom PopとLo-fi R&Bを美しく融合させた作品に仕上がっている。誰かに話すほどでもない孤独や思いを、そっとすくい上げてくれるような優しいトーンが全編に漂う。
House/Electronic

YMOの『テクノデリック』は、音楽の未来を一足先に紡いだ革新的な一作!無機質なシンセ、反復のリズム、そして社会的メッセージを紡ぎ出すそのサウンドは、80年代の限界を超えて、テクノとエレクトロニカの礎を築いた金字塔

1981年にリリースされたYELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)の『テクノデリック』は、バンドの音楽的転換点を象徴するアルバムであり、当時の音楽シーンにおけるテクノポップの概念を大きく拡張した革新的な作品です。コンピュータ制御によるサンプリングやシーケンスが大胆に導入され、より実験的でミニマルなアプローチが追求されたこのアルバムは、後のエレクトロニカやテクノの潮流を先取りするかのような先見性を放っています。
House/Electronic

エックス・コーストの『Pianissimo』は、90年代レイヴカルチャーの熱気と、ミニマルでメロウな空気感を現代に再構築した、“静寂”と“昂揚”が共鳴するエモーショナル・クラブサウンドの旅

セルビア出身のプロデューサーX-Coastによるアルバム『Pianissimo』は、そのタイトルが示すように、音楽の“静寂”や“繊細さ”をテーマにしつつも、クラブカルチャーの熱気を巧みに内包した作品だ。ラフでレイヴィーなイメージが強かった彼のサウンドが、今作ではより洗練され、音の重なりや余白にこだわった構築美を見せている。90年代ハウス、アンビエント、ブレイクビーツ、UKガラージのエッセンスを取り入れ、繊細なピアノフレーズとタフなリズムの対比が印象的だ。
Rock/Alternative

ワロウズが『Model』で描き出すのは、青春の終わりと大人へのはじまり、その曖昧で不安定な瞬間を見事に音像化した、時間と心を超えて響くオルタナティブ・ドリームの集大成

ロサンゼルス発のインディー・ロック・バンド、Wallowsが2024年にリリースした3作目のアルバム『Model』は、バンドの成熟と実験精神が見事に融合した一枚だ。かつてのギターポップ中心のサウンドから一歩踏み出し、80年代のシンセポップや90年代のオルタナティヴロックを咀嚼しながら、現代の感性で再構築したサウンドが詰まっている。恋愛の機微、不安、そして自己認識の葛藤を描いたリリックが、ノスタルジックでありながらもフレッシュに響く作品に仕上がっている。
Rock/Alternative

ウォール・オブ・ヴードゥーの『Call of the West』は、電子の荒野を旅するアルバム!ポスト・パンクの知性とニューウェイヴの異化が絶妙に溶け合い、サイケでもシリアスでもない、不思議な浮遊感を漂わせる

1982年にリリースされたWall Of Voodooのセカンド・アルバム『Call of the West』は、ニューウェイヴとアメリカーナが奇妙に交差する独自のサウンドスケープを持った作品です。シンセサイザーとトワンギーなギター、語りかけるようなボーカルが織り成すその音世界は、80年代初期のアメリカの不安と郷愁を映し出しています。中でも代表曲「Mexican Radio」は今なおカルト的な人気を誇り、アルバム全体に漂うダークでサイケデリックな空気が、聴く者を西部の荒野と都市の狭間へと誘います。
Rock/Alternative

壊れそうな心の奥底から紡がれる、静かで力強い叫び!ヴァガボンの『Persian Garden』は、異郷の記憶と少女の葛藤がローファイ・インディーの音像に乗ってそっと語られる、誠実で親密な“はじまり”の物語

ブルックリンを拠点とするアーティスト、Vagabon(本名:Laetitia Tamko)が2014年に自主リリースしたEP『Persian Garden』は、彼女の内省的で感情豊かな音楽の原点とも言える作品だ。DIY精神と、未完成の中に宿る強い表現意志が重なり、のちの彼女のキャリアに繋がる重要な一歩となっている。フォーク、インディーロック、ローファイな質感が融合したこのEPは、当時のアメリカDIYシーンの一端を感じさせながらも、Vagabon独自の視点で綴られる個人的な物語が印象的だ。