New Radicalsが1998年に放った唯一のフルアルバム『Maybe You’ve Been Brainwashed Too』は、ポップとロック、そしてちょっぴりの皮肉を詰め込んだジャンキーな名盤だ。一発屋として語られることも多い彼らだが、その内包するメッセージ性とジャンルを横断するセンスは、今聴き直しても驚くほど鋭い。
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Amazon.co.jp: Maybe You've Been Brainwashed Too : ニュー・ラディカルス: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
このアルバムのジャンルは一言では括れない。ポップロックを軸にしながら、ブルー・アイド・ソウルやオルタナティブ、さらにはファンクやゴスペルの要素まで感じさせる折衷主義的サウンドが特徴だ。
中心人物であるグレッグ・アレクサンダーの歌声は、時に熱く、時にクールで、社会への怒りや皮肉、そして愛情が滲むようなニュアンスに満ちている。音楽的には70年代のTodd RundgrenやPrince、さらにはThe Rolling Stones的な感覚を90年代的に再解釈したような作風が感じられ、時代とジャンルを越境する魅力がある。
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おすすめのトラック
- 「You Get What You Give」
代表曲であり、世界的ヒットとなったアンセム的ナンバー。明るくキャッチーなメロディの裏に、「Fake computer crashes are convenient excuses」といった鋭いリリックが潜み、商業主義への批判や若者へのエンパワメントを織り込んでいる。 - 「Someday We’ll Know」
切なくもしっとりとしたバラード。失われた愛と、その理由を問い続ける内省的な詞が胸に残る。後にMandy MooreとJon Foremanによるカバーでも有名になった一曲。 - 「Jehovah Made This Whole Joint for You」
ゴスペル調のアレンジが効いたトラックで、魂の叫びのようなヴォーカルとグルーヴィーなリズムが印象的。皮肉と信仰の両義的な視点が、宗教と社会への視線を浮き彫りにする。 - 「Maybe You’ve Been Brainwashed Too」
タイトル曲にしてアルバムの中核ともいえるトラック。重たいビートと語るようなボーカルが特徴で、「操作される大衆」と「覚醒する個人」の対比が、歌詞と音に巧みに込められている。
アルバム総評
『Maybe You’ve Been Brainwashed Too』は、一発屋的ヒットの陰に隠れがちな作品だが、その実、鋭い社会批評とジャンル横断的な音楽性が詰まった知的かつ感情的なアルバムである。時代に翻弄されながらも「真実を見極めよう」とするメッセージは、むしろ現代にこそ響くものがある。
たった一枚で音楽シーンを去ったNew Radicalsだが、その痕跡は今もなお、鮮やかに刻まれている。