2014年にリリースされた『Divide and Exit』は、ノッティンガム出身のデュオ、Sleaford Mods(スリーフォード・モッズ)の名を世界に轟かせた出世作です。本作は、緊縮財政、労働者階級の苦境、そして英国社会の閉塞感に対する痛烈な風刺と怒りに満ちています。装飾を一切削ぎ落とした武骨なスタイルは、当時の音楽シーンにおいて極めて異質でありながら、そのあまりにも純粋なエネルギーによって、パンクとヒップホップの新たな地平を切り拓きました。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、ポスト・パンク、エレクトロ・パンク、そしてUKヒップホップを極限までミニマルに融合させたものです。プロデューサーのアンドリュー・フェーン(ノートン・リザー)が鳴らすのは、まるでおもちゃのような安っぽいリズムマシンとループするベースラインだけ。その上に、ボーカルのジェイソン・ウィリアムソンが、凄まじい東ミッドランズ訛りで罵詈雑言に近いスポークン・ワード(語り)を叩きつけます。メロディよりもリズムと「言葉の弾丸」に特化したこの音楽性は、粗削りでありながら中毒性が高く、聴く者の耳にダイレクトに突き刺さります。
おすすめのトラック
- 「You’re Brave」 執拗に繰り返される不穏なベースラインと、叩きつけるようなドラムビートが特徴的な一曲です。「お前は勇敢だな」という皮肉交じりのタイトル通り、中身のない人間や体制側の人間を冷徹に突き放すようなジェイソンのデリバリーが冴え渡っています。
- 「The Corgi」 アルバムの中盤に位置する、非常にスリーフォード・モッズらしい「不快感」と「中毒性」が同居したトラックです。奇妙にうねるシンセ音と無機質なビートに乗せて、ジェイソンが独自の観察眼で周囲の凡庸さや社会の歪みを皮肉ります。一度聴くと耳を離れない独特の質感が魅力です。
- 「A Little Ditty」 比較的ゆったりとしたテンポの楽曲ですが、その分ジェイソンの「怒り」のニュアンスがより鮮明に伝わります。退屈な日常や偽善的な文化に対する嫌悪感が、淡々としたビートの中で静かに爆発しており、緊張感の漂う一曲です。
- 「Liveable Shit」 タイトルの通り、劣悪な生活環境や低賃金労働を揶揄した楽曲です。執拗に繰り返されるリズムは、抜け出すことのできない負のループを表現しているかのようであり、労働者階級のリアルな絶望感を音楽として昇華させています。
- 「Middle Men」 社会の隙間にいる「中間搾取者」や無能な役人たちをターゲットにした痛烈な批判ソングです。スカスカのサウンドだからこそ、言葉の一つ一つが重みを持ち、Sleaford Modsがなぜ「現代のパンク」と呼ばれるのかを証明するような鋭利な楽曲です。
アルバム総評
『Divide and Exit』は、2010年代以降の英国音楽史において最も重要なアルバムの一つです。ここには高価な楽器も洗練されたスタジオ技術もありませんが、代わりに「真実」と「魂」があります。ノートン・リザーが構築する極北のミニマリズムと、ジェイソンの容赦ない言葉の暴力。この二つが合致した時、音楽は単なる娯楽を超え、社会の写し鏡としての機能を果たします。着飾ることのない剥き出しの芸術が、いかに強力であるかを思い知らせてくれる、永遠の不謹慎で高潔なパンク・ドキュメントです。



