Rock/Alternative

ワロウズが『Model』で描き出すのは、青春の終わりと大人へのはじまり、その曖昧で不安定な瞬間を見事に音像化した、時間と心を超えて響くオルタナティブ・ドリームの集大成

ロサンゼルス発のインディー・ロック・バンド、Wallowsが2024年にリリースした3作目のアルバム『Model』は、バンドの成熟と実験精神が見事に融合した一枚だ。かつてのギターポップ中心のサウンドから一歩踏み出し、80年代のシンセポップや90年代のオルタナティヴロックを咀嚼しながら、現代の感性で再構築したサウンドが詰まっている。恋愛の機微、不安、そして自己認識の葛藤を描いたリリックが、ノスタルジックでありながらもフレッシュに響く作品に仕上がっている。
Rock/Alternative

ウォール・オブ・ヴードゥーの『Call of the West』は、電子の荒野を旅するアルバム!ポスト・パンクの知性とニューウェイヴの異化が絶妙に溶け合い、サイケでもシリアスでもない、不思議な浮遊感を漂わせる

1982年にリリースされたWall Of Voodooのセカンド・アルバム『Call of the West』は、ニューウェイヴとアメリカーナが奇妙に交差する独自のサウンドスケープを持った作品です。シンセサイザーとトワンギーなギター、語りかけるようなボーカルが織り成すその音世界は、80年代初期のアメリカの不安と郷愁を映し出しています。中でも代表曲「Mexican Radio」は今なおカルト的な人気を誇り、アルバム全体に漂うダークでサイケデリックな空気が、聴く者を西部の荒野と都市の狭間へと誘います。
Rock/Alternative

壊れそうな心の奥底から紡がれる、静かで力強い叫び!ヴァガボンの『Persian Garden』は、異郷の記憶と少女の葛藤がローファイ・インディーの音像に乗ってそっと語られる、誠実で親密な“はじまり”の物語

ブルックリンを拠点とするアーティスト、Vagabon(本名:Laetitia Tamko)が2014年に自主リリースしたEP『Persian Garden』は、彼女の内省的で感情豊かな音楽の原点とも言える作品だ。DIY精神と、未完成の中に宿る強い表現意志が重なり、のちの彼女のキャリアに繋がる重要な一歩となっている。フォーク、インディーロック、ローファイな質感が融合したこのEPは、当時のアメリカDIYシーンの一端を感じさせながらも、Vagabon独自の視点で綴られる個人的な物語が印象的だ。
Reggae/Ska

UB40の『Labour of Love II』は、甘く切ないラヴソングたちが、UKレゲエ独自のスモーキーなサウンドで再解釈され、聴くたびに胸の奥にじんわりと残る!原曲の魅力を尊重しながらも、柔らかく芯のあるサウンドで包み込む

1989年にリリースされたUB40の『Labour of Love II』は、イギリスのレゲエ・バンドによるカバーアルバム第2弾であり、前作『Labour of Love』(1983年)の成功を受けて制作された作品です。原曲への敬意とUB40らしいアレンジが絶妙に調和し、レゲエの持つ普遍的な魅力を再び世に問うたアルバムとして、今なお根強い人気を誇ります。本作では、70年代のラヴァーズ・ロックやレゲエの名曲を、柔らかなシンセとスムーズなホーンで包み込んだリラックス感あふれるサウンドが展開され、心地よい時間を演出してくれます。
Reggae/Ska

心を突き動かすビート、そして社会への鋭い視線!トースターズが1990年代のニューヨーク・スカ・シーンの核心を貫いた傑作『Hard Band for Dead』は、スカの楽しさと真摯なメッセージ性が見事に融合した一枚!

1996年にリリースされたThe Toastersの『Hard Band for Dead』は、サード・ウェーブ・スカの代表格として知られるバンドが、その音楽的成熟と社会的メッセージ性を鮮やかに融合させた快作だ。80年代からNYスカシーンを牽引してきた彼らが、よりタイトで多層的なアレンジを引っ提げて帰ってきたこのアルバムは、スカ愛好家だけでなく、ファンキーなグルーヴやラテンのリズムを愛する全てのリスナーにとって魅力的な作品となっている。
Rock/Alternative

トーキング・ヘッズが放つ『Fear of Music』は、音楽が社会を映し出す鏡であることを証明する実験的で、そして美しく中毒的なサウンド・ジャーニー!前衛であることに意味を見出したこの名作は、時代を超えて“音”の在り方を問いかける

1979年、ニューヨークのアートロックシーンから放たれたTalking Headsの3rdアルバム『Fear of Music』は、混沌とした都市の不安とテクノロジーの進化に対する驚異を、音楽と歌詞の両面で表現したエッジの効いた傑作だ。前作『More Songs About Buildings and Food』に続き、ブライアン・イーノをプロデューサーに迎え、サウンドはさらに冒険的に、リズムはより複雑に、そして歌詞はパラノイアと知性に満ちていく。
Pop/Soul/Jazz

タイ・ヴェルデスが等身大の感情をHD画質で描き出す!『HDTV』は、現代を生きる私たちのリアルを、軽快でキャッチーなサウンドに乗せて映し出す“心のスクリーン”だ

ポップミュージックの新たな景色を映し出す、Tai Verdesのセカンドアルバム『HDTV』。TikTok発のヒットで知られる彼が、初期の無邪気な陽気さだけにとどまらず、より成熟し、等身大の「今」を描き出した本作は、カラフルでエネルギッシュなだけでなく、時に繊細で真っ直ぐなメッセージを放つアルバムだ。全14曲、ジャンルをまたぎながらも芯のある彼のアイデンティティが貫かれている。
Rockabilly/Psychobilly

ロカビリーの狂熱とパンクの牙が衝突する瞬間を聴き逃すな!ストレッサーの『Burn Out』は、凶暴なビート、怪しげなスラップベース、そして火花を散らすギターが、疾走感と共に“燃え尽きる”感覚を全身に刻み込む

ドイツのサイコビリー・シーンを牽引するStressorが放つ2005年のアルバム『Burn Out』は、荒々しいエネルギーとキャッチーなリフが渦巻く強力な作品だ。クラシックなロカビリーを下敷きにしながら、パンクの攻撃性とサイコビリー特有のダークなユーモアが融合。タイトル通り、全速力で燃え尽きるようなテンションが全編に漂っている。
Punk/SkaPunk/Garage

スリーフォード・モッズの『Austerity Dogs』は、ビートに乗せて放たれる社会風刺の咆哮!これは、ポスト・パンクでもヒップホップでもない。鋭利な言葉と削ぎ落とされた音の融合が生んだ、21世紀のストリート・ドキュメント

怒りとユーモア、そして最低限のビート。Sleaford Modsの『Austerity Dogs』(2013年)は、イギリスの労働者階級のリアルをむき出しで描き出した現代的なパンク/ポストパンクの傑作だ。ヴォーカルのJason Williamsonが繰り出す毒舌ラップと、Andrew Fearnのミニマルなトラックは、音数こそ少ないが、その衝撃力は暴動級。経済格差や政治腐敗に怒りを燃やすその姿勢は、まさに“ポスト・オアスターリティ”時代の怒れる犬たちの遠吠えである。
Punk/SkaPunk/Garage

S.H.I.T.が描き出す崩壊と再生のリアル!混沌と暴力が支配するこの世界で、わずかな希望と信念を込めて放たれる『For a Better World』は、単なるハードコア・アルバムではない、すべてのアウトサイダーへの賛歌だ

トロント発のハードコア・パンクバンド、S.H.I.T.(Sexual Humans In Turmoil)が2023年に放ったアルバム『For a Better World』は、苛烈な怒りと希望を詰め込んだ21世紀型ハードコアの結晶だ。地下シーンで着実に存在感を強めてきた彼らが、本作で描くのは、破壊の先にある再構築のビジョン。ノイズと衝動、そして鋭利なリリックが渦巻く一枚である。